自民党・新型コロナ小委 感染症危機対応で「医薬品研究開発ファンド」設立提言 産業振興策は抜本改革
公開日時 2020/10/09 04:51
自民党の「新型コロナウイルス関連肺炎対策本部・感染症対策ガバナンス小委員会」は10月6日、感染症危機対応医薬品研究開発ファンドの設立を盛り込んだ提言をまとめた。新型コロナ感染症の治療薬やワクチン開発は「世界から大きく遅れをとっており、改めて行政と産業振興策の抜本改革が焦眉の急である」と指摘。国のリーダーシップの下で、製薬企業、医療従事者、IT企業など産官学が関与するコンソーシアム形式の連携スキームの整備を求めた。さらに、感染症危機対応医薬品研究開発ファンドの設立が望ましいとの考えを提言した。
◎「研究・開発が停滞している」と危機感を表明
自民党小委員会はコロナ禍において「研究・開発が停滞している」と危機感を表明した。その背景として、欧米に比べて学術発信が極めて少なく、これにより科学的根拠に基づいた政策判断や新たな治療法の開発などに支障を生じたと指摘した。さらに、この原因として、地方の現場から感染研や厚労省への必要なデータ収集の欠落と国レベルでの情報公開原則の不徹底があったと思われると分析。国が全てのデータを一括掌握するほか、データへのアクセスに関する基本的な法体系を整備することでデータの利活用について担保すべきと強調した。
◎ワクチン供給「大半を海外メーカーに頼ることの意味を噛みしめるべき」
新型コロナの治療薬やワクチンの研究・開発について、「来年前半に想定されている国民への接種は、その全量ないし大半を海外メーカーからの輸入に頼ることになる可能性が高いことの意味を噛みしめるべきである」と指摘。産業振興策の抜本改革を求めた。
◎政府による成果物の買上げや生産者へのインセンティブも
具体的な提言では、「健康危機発生時には、起因病原体の性状を踏まえた、診断薬、治療薬、ワクチンの研究開発を迅速に立ちあげなければならない」と強調。国は未知の感染症の分離した病原微生物および解析したゲノム情報などを迅速に公開する。その上で製薬企業や大学等の研究拠点における検査薬や新たな治療法の研究開発等に積極的に活用できる情報公開ルールや体制などを整備すべきとした。
また国のリーダーシップの下で、製薬企業やアカデミアなどオールジャパンの知見を速やかに結集できるスキームの整備や、研究資金、研究組織・施設、研究人材の3要素について平時から産官学が連携して確保すべく、「感染症危機対応医薬品研究開発ファンド」の設立を提言した。さらに治療薬やワクチンなどの成果物について、政府による買上げ保障や開発者や生産者へのインセンティブとして薬事優先審査などを合わせて措置することも盛り込んだ。