沢井製薬の澤井健造代表取締役社長は９月24日に開催した記者懇談会で、後発品だけでなく、新薬への参入、さらにはヘルスケア領域へと参入する意欲を示した。筋萎縮性側索硬化症（ALS）治療薬・WN1316など新薬に挑戦するが、さらに、ヘルスケア領域に挑戦する姿勢を鮮明にした。2021年４月１日に持ち株会社に移行する狙いについても、「今後、ジェネリックだけでなくヘルスケアの中で、新たな領域に参入する方法として、インフラを外から獲得する場合にも、持ち株会社の方がスムーズにやりやすい」と目的を語った。研究開発力を武器に、“一番手上市”することで、ジェネリックメーカーとして圧倒的な地位を確立するとともに、新薬やヘルスケア領域に参入することで、飛躍を遂げたい考えだ。

◎新製品の単独上市、競合品の少ない品目が売上牽引「コロナの影響、補って余りある」

会見で澤井社長は、足下の業績について、新型コロナウイルス感染症の影響で「厳しい状況だった」と振り返った。そのうえで、第２四半期については、「新製品の単独上市、競合の少ないものが非常に多かった。新製品の売上が牽引してくれている状況にある。８月も新製品の売上で、コロナの影響は否めないが、それを補って余りあるくらい新製品が非常によく売れている」と自信をみせた。メマンチン塩酸塩は、ドライシロップの剤形が単独承認となるなど、２月承認は14成分29品目、８月承認は３成分11品目を取得している。

新薬への挑戦も表明する。ALS治療薬・WN1316についてニュージェン・ファーマ（東京都）と共同開発を進めるほか、コルチコトロピン注射剤についても米国で新薬のスキームでの申請を目指す。澤井社長は、「ジェネリックメーカーの規模感を考えると汎用性の高い新薬は難しい。オーファン指定を受けているもの、ニッチな領域のものをやっていくのが我々のやり方ではないか。特にオーファンであれば当局と相談しながら色々な支援を受けることもできる」と述べた。

一方で、今後パイプラインにオーファンを拡充するかについては、「検討する」とし、「この件については、我々として製薬企業としてチャレンジすべきものであると判断したからやっている。オーファンをやって、新薬とジェネリックのハイブリットをやるという方針が出ているわけではない」とも述べた。将来のビジョンについては現在策定に向けて検討を進める、新中期経営計画や10年間の長期ビジョンで打ち出す考えだ。

◎コロナ禍の営業活動　最大の課題は「メールアドレスの取得」　対面での有効性強調

コロナ禍で、情報提供活動も影響を受けた。緊急事態宣言後、電話による問い合わせや、ウエブサイトへのアクセスが減少。病院や薬局からの訪問自粛を受け、MR活動も大幅に減少した。こうしたなかで、新製品の売上について同社の西村誠治営業本部長（執行役員）は、「計画通り」と説明する。この理由として、西村営業本部長は、「MSとの共闘作業」をあげた。医療機関への訪問は現状でも難しい一方で、医薬品卸への訪問は５月、保険薬局には５月後半以降はMR活動ができていると説明。「対面での活動は非常に有効だった」とした。

一方で、ウエブ面談の活用は、医薬品卸との活用など、限定的なものにとどまった。医師や薬剤師へのアクセスについては、「メールで配信する時に相手のメールアドレスを教えてもらっていなかったというのが一番の課題だ。MRはメールアドレスをしっかり聞いてくることがまず大事だ」と述べた。そのうえで、自社サイトでメールアドレスを登録してもらう仕組みの構築について検討を進めていることを明らかにした。

ウエブセミナーなどを充実させたことも説明。さらに、m３の活用に言及したほか、「リモートについても卸も工夫をしている。iPadを使って先生方とメーカーをつなぐこともしている。利用できる部分は利用したい」と述べた。ただ、「ただ、なかなか表情をうかがうということがリアルタイムにできないということで、説明がタイムリーにできないなど、課題は残るだろうと思う」とも語った。

◎回収情報　まずは電話でアクセス

緊急事態宣言発出以降に、沢井製薬もソフトバッグ製剤など回収の対応に追われた。西村本部長は、「回収や重要なものはすべて毎回電話をするということにしている。まずは電話で概要を伝える。訪問の可否を聞く。訪問して良ければそのまま訪問する」という体制を敷いていると説明。病院への訪問が難しいなかで、「速い対応だったと喜ばれるという評価はいただいている」と述べた。また、回収情報については、「登録された病院、調剤薬局には一斉にFAX送信をできるシステムを作っている。第一報を早めに、という情報提供体制は、他の後発メーカーさんより早くできていると自負している」と自信をみせた。