東京都医師会・尾﨑会長「地域医療はかかりつけ医が守る!」 新型コロナとインフルエンザ同時流行に備え
公開日時 2020/08/31 04:53
東京都医師会の尾﨑治夫会長は本誌取材に応じ、今冬にも新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行が懸念されるなかで、地域での医療提供体制構築を急ぐ考えを明らかにした。カギを握るのは、かかりつけ医の機能発揮だ。「かかりつけ医は、基本的に自分たちで診るという覚悟が必要だ」と語った。
Monthlyミクス9月号では、Promotion「新型コロナとインフルエンザの同時流行に備える―求められる地域医療体制 医薬品供給にどう挑む」を特集しております。尾﨑会長の一問一答はこちらから(会員限定)。
新型コロナとインフルエンザの同時流行に向け、東京都医師会は医療提供体制の整備を急ぐ。以前から主張してきた新型コロナ患者を重点的に診る新型コロナ専門病院については、東海大学医学部付属東京病院(渋谷区)、移転前の旧都立府中療育センター(府中市)の2か所で約200床を確保し、9月以降患者を受け入れることになった。尾﨑会長は、「今冬に向けて1000床確保することとなっており、仕組みを拡充していけば一つ解決する」と話す。
◎公立・公的病院が支える体制構築を
民間病院の多い東京都だが、様々な調査では新型コロナ患者を受け入れた医療機関が赤字になっている。尾﨑会長は、「民間病院は赤字になってしまうと、2次補正予算のように補填が必要だが、公立・公的病院が新型コロナ患者を積極的に受け入れてくれれば、この必要はない」と話す。これにより、民間病院が新型コロナ以外の医療に注力できる。「検査や手術が普通にできる医療機関がわかれば、患者さんも受診しやすくなる。少なくとも、新型コロナが落ち着くまでは、このようなトリアージが必要で、徹底的に役割をわけたほうがいいと考えている」と述べた。
◎地域でかかりつけ医が職能を発揮 発熱外来浸透に注力
もう一つ重視するのが、PCR検査体制の整備だ。東京都医師会は、地域包括ケア圏内(学校区)に1つの検査センターとして都内で1400か所(人口1万人当たり1か所程度)への拡大を掲げている。東京都はPCRセンターの拡充を進めてきたが、「インフルエンザの疑いのある患者さんの予約を入れてしまうと、感染を拡めてしまうリスクがある。秋冬は、PCRセンターで対応するのは難しい。所属する内科医や小児科医などが発熱外来を設け、かかりつけ医による唾液のPCR検査などを活用して検査をしてもらいたいと考えている」と強調した。特に唾液による検査の有用性を強調した。新型コロナとインフルエンザの鑑別診断が難しいなかで、「抗インフルエンザ薬を服用させ、それと並行して唾液のPCR検査を行うというのも一考だろう」との考えを示した。
尾﨑会長は、「発熱外来を設置している医療機関は、発熱患者とそれ以外の導線を時間なり、空間なりでわける必要がある。導線もわけられず、唾液のPCR検査もできない医療機関では、電話やオンラインなどのツールを活用した対応も必要だ。新型コロナが否定できない場合には、発熱外来を設けている医療機関やPCRセンターに患者さんに赴いてもらうよう促す形になるのではないか。そこまでやらなければ、かかりつけ機能を果たしているとは言えない」との考えを示した。なお、
厚労省は、「かかりつけ医等の地域で身近な医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で、相談・外来診療・検査を行う体制を整備する」ことを掲げ、10月中にも体制整備を進めることを決めた。
◎初診からのオンライン診療はかかりつけ医に限定すべき
オンライン診療の活用については、「初診からオンラインができるのはかかりつけ医に限定すべき。かかりつけ医の定義は難しいが、普段から患者や、患者家族を診ていて医師会活動をしているような医師であればよいのではないか。ただ、それを外してオンライン診療を普及させることは反対だ」と述べた。
そのうえで、「かかりつけ医は、基本的に自分たちで診るという覚悟が必要だ。オンライン診療を活用して、良い所取りをして他の医療機関に任せるというのでは、かかりつけ医とは言えない。リスクを取る人こそ、医者だ。経済は重要だが、日本の医療は公的保険のなかで成り立っている。研修医と、経験を積んだ私が診る場合の初診料も変わらないが、患者さんのためになるのならばあえて同じでよいと思っている」と強調した。