Meiji Seika・梅木医薬営業本部長 患者減の耳鼻科や小児科での活動「医師と一緒に何ができるか考える」
公開日時 2020/07/09 04:51
Meiji Seikaファルマの梅木祐仁・医薬営業本部長は7月8日、東京都内で開いた業界誌・紙を対象とした記者会見で、コロナ禍で患者が激減した耳鼻科や小児科での活動について、「患者さんが少なくなったから知りません、とのお付き合いをするつもりはない」と強調し、「我々に何かできることはないかとのスタンスで、(医師らと)一緒に考えている」と述べた。今冬に新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが同時に流行した場合、医療機関の混乱に拍車がかかる恐れがあるため、明治グループではインフルエンザの予防ワクチンの増産に取り組んでいる。梅木氏は、一例として耳鼻科でのインフルエンザワクチンの予防接種を提案。医療機関経営の一助となるべく、「できる限りの支援をさせていただきたい」と話した。
感染症領域のリーディングカンパニーであるMeiji Seikaは、耳鼻科や小児科を重点診療科のひとつに位置付けている。梅木氏は、「経口抗菌薬によって耳鼻科や小児科の先生方にここまでお付き合いしてもらい、これだけの会社になった」との認識を示し、コロナ禍で苦境にある両診療科を最大限に支援していく姿勢をみせた。ただ、患者動向に変化が見られず、市場そのものが縮小して「どうにもならない場合」には、中枢神経領域やワクチン事業、21年度の承認取得を計画している血液がん治療薬ツシジノスタット(一般名、開発コード:HBI-8000)へのリソースを厚くする可能性にも触れた。
明治グループのKMバイオロジクスでは、インフルエンザ予防ワクチンの増産を進めている。KMバイオの永里敏秋社長は会見で、同ワクチンの供給量は19年度実績よりも「かなり増加する」とし、「早い時期から接種してもらえるよう、9月末までに想定本数の約半分を出荷したい」と述べた。
■新型コロナワクチン 21年度中にP1/2終了予定
KMバイオでは、新型コロナウイルス感染症の不活化ワクチンの開発を進めている。日本医療研究開発機構(AMED)の公募研究開発課題「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発(企業主導型)」に採択され、国立感染症研究所や東京大学医科学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所と協業している。
永里社長は、「厚労省から開発スピードを上げろ」とハッパをかけられているとした上で、「21年3月までに非臨床試験データをまとめ、4月以降、ヒトを対象としたフェーズ1/2にいかないといけない。21年度中にP1/2が終わるスケジュール」と説明した。ただ、「問題はP3。症例数をどうするか。ここは厚労省との話し合いになる」と指摘し、P3時点での新型コロナの流行状況次第では海外データを参考にして国内症例数を少なくするなどの対応がいるとの考えも示した。
不活化ワクチンは、大量に培養されたウイルスや細菌からウイルス粒子や細菌の菌体を集めて精製した後、加熱やホルマリンなどの薬剤などを用いて処理し、感染力や毒力をなくした病原体やその成分で作ったワクチンのこと。インフルエンザ、4種混合、日本脳炎などの不活化ワクチンがある。
永里社長は個人的な意見とした上で、「新型コロナウイルスは、そう簡単ではない。これまでのウイルスのように簡単にワクチンができるのか非常に疑問視している」とし、「(新型コロナの)不活化ワクチンもうまくいくか非常に不安視している。もうひとつ知恵を絞り、例えばアジュバントなどで工夫していかないと、このウイルスを制御するということは並大抵ではないのではないかとの感想をもっている」とも話した。
■Meiji SeikaとKMバイオを一体的に運営
明治グループでは、明治ホールディングスの子会社としてMeiji SeikaとKMバイオがあるが、両社を「医薬品セグメント」として一体的に運営していくことになった。医薬品セグメントのCOO(Chief Operating Officer)にMeiji Seikaの小林大吉郎社長が6月に就任した。
例えばヒト用ワクチン事業では調達、生産、保管、輸送に、販売機能も加えてサプライチェーンを一体運用する。販売機能はMeiji Seikaに4月に新設したワクチン企画推進部が担い、顧客情報管理や需要予測などを行う。小林COOは、「ワクチンは接種されてこそ意味がある。接種希望者に接種が完了するというところまでが一つのミッション。生産から最後の顧客情報管理・需要予測までがひとつの企業体でできることは最大のメリットだと思う」と述べた。