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国立がん研究センター「CIRCULATE-Japan」始動 リキッドバイオプシーを用いた個別化医療を実現

公開日時 2020/06/12 04:51
国立がん研究センターと日本医療研究開発機構は6月10日、リキッドバイオプシーを用いた個別化医療の実現を目指す新プロジェクト「CIRCULATE-Japan」を始動すると発表した。外科治療を行う患者から血液を採取し、血中循環腫瘍DNAを検査することで個々のオリジナル遺伝子パネルを作成、患者の術後再発リスクを予測するというもの。再発リスク評価の精度とその臨床的有用性が示されれば、術後補助化学療法の効果が期待される患者を選別して治療することが可能となる。今後は、国内・海外で約150施設の協力を得て、見えないがん(術後微小残存病変)を対象とした世界最大規模の医師主導国際共同臨床試験をスタートさせた。

これまで大腸がんの手術後には病期から推定される再発リスクに応じ、再発予防を目的とした術後補助化学療法が行われてきた。しかし患者ごとに薬剤の効果や副作用に違いがある一方で、末梢神経障害が後遺症として残ることが問題視され、治療方法を選択する上での課題となっていた。

近年は、より精密にがんの再発リスクを推定する手段として、患者から採取した血液から血中循環腫瘍DNA(ctDNA=血液中にごく微量に存在するがん由来DNA)を解析し、診断治療へ応用する「リキッドバイオプシー」の研究開発が進んでいる。今回設立した「CIRCULATE-Japan」は、米国Natera社が開発した高感度遺伝子解析技術「Signatera(シグナテラ)」アッセイを用い、患者ごとに術後の再発リスクを推定する。

◎世界最大規模の医師主導国際共同試験 国内145施設、海外1施設が協力

国立がん研究センターは、リキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目的に世界最大規模の医師主導国際共同臨床試験を開始する。研究期間は2020年4月1日~30年 3月31日。対象症例は根治的外科治療を予定する結腸・直腸がん。試験は2015年2月に立ち上げた「SCRUM  Japan」の基盤を活用する。参加施設は、国内145 施設、海外1施設(台湾)。根治的外科治療を予定する「ステージ 2 ~4」を含む結腸・直腸がん患者約2500人を対象に、術後2 年間、リキッドバイオプシーを用いた再発のモニタリング検査(Signatera検査)を実施する。

具体的には、手術で摘出した腫瘍組織を用いた全エクソーム解析を実施。その結果をもとに、患者オリジナルの遺伝子パネルを作製する。その後、術後1か月時点から定期的に血液を採取し、患者ごとのオリジナル遺伝子パネルを用いて、血液中のがん遺伝子異常の有無を調べる。さらに、術後1か月時点でがん遺伝子の異常が検出されない「ステージ2~3」の患者1240人を対象に、従来の標準的治療である術後補助化学療法群と経過観察群とを比較する第Ⅲ相試験 (VEGA 試験)も同時に登録を開始する。

国立がん研究センターは、「見えないがんに対してリキッドバイオプシーによる再発リスク評価の臨床的有用性が証明できれば、術後補助化学療法の省略または減弱、再発の早期発見等、より最適な医療の提供が実現できる」と強調した。

◎EPSホールディングスと共同研究契約締結

なお、このプロジェクトの実施にあたり、EPSホールディングスと国立がん研究センターは長期間の追跡によって得られた臨床・遺伝子情報の品質担保とプロジェクトの円滑な推進を行うための共同研究契約を締結した。



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