透析患者の新型コロナ感染者数・全国で104人 重症化リスク高く、無症状患者へのPCR検査で適応基準
公開日時 2020/06/08 04:52
日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会、新型コロナウイルス感染対策合同委員会は6月5日、透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者数が全国で104人、死亡者数が18人になったと報告した。透析患者は糖尿病や高血圧症など合併症を有する高齢患者も多いことから、新型コロナで重症化のリスクが高い。加えて定期的な通院が求められるため院内感染のリスクもあり医療崩壊を招く可能性もある。このため学会は、無症状の透析患者に対するPCR検査の重要性を指摘している。合同委員会が公開した新型コロナ感染者の原疾患は、糖尿病性腎症が36人、慢性糸球体腎炎が23人。酸素投与が必要な患者は39人だった。治療薬はアビガンの投与患者が32人、オルベスコが17人、レムデシビルの投与患者はゼロだった。
透析患者における新型コロナウイルス感染者は、重症化のリスクが高いといわれている。特に、透析施設内に新型コロナの感染者が発生した場合、感染拡大のみならず、診療機能の抑制・停止に直結し、医療崩壊を招く恐れがあるため、院内感染の防止対策の徹底が求められている。
◎日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会が「PCR検査の適応基準」を策定
このため日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会の3学会は6月2日に「無症状の透析患者に対するSARS-CoV-2のPCR検査の適応基準」を策定し、公表した。具体的には、①透析室内(送迎の動線を含む)における感染者(透析患者および医療者等)との接触、および患者家族に感染者がいる場合、いわゆる濃厚接触と考えられる透析患者、②献腎移植が決定した移植待機中の透析患者、③その他、医師が検査すべきと判断した透析患者(例えば、疑診例との濃厚接触者)-に対してPCR検査を実施する。このほか、全身麻酔を要する手術を予定する透析患者や生体腎移植を予定している透析患者などについては、紹介先の病院等と相談のうえ決定するとした。
◎東京・関東で全体の57% 80歳代以上が3割占める
新型コロナウイルス感染対策合同委員会がまとめた透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者数(6月5日午前8時時点)によると、感染者数は全国で104人。4月10日段階の感染者数は31人。この2か月で3倍に増加している。
104人の内訳は、東京地区35人、東京を除く関東地区24人、近畿地区21人、甲信越・北陸・東海地区12人、九州・沖縄地区11人、北海道・東北地区1人、中国・四国地区0人。感染者を年齢別にみると、80歳以上29.2人、70歳代20.6%、60歳代16.7%。
原疾患は糖尿病性腎症が36人、慢性糸球体腎炎23人、腎硬化症12人、その他10人、情報なし18人だった。肺炎像は胸部X線が42人、胸部CTが53人。酸素投与は、酸素投与「あり」が39人、呼吸機器「あり」が12人、ECMO「あり」が3人。
◎治療薬はアビガン34人、オルベスコ17人にそれぞれ使用
治療薬については、アビガン「あり」34人、アビガン「なし」35人、オルベスコ「あり」17人、オルベスコ「なし」50人、プラニケル「あり」4人、プラニケル「なし」62人、カレトラ「あり」3人、カレトラ「なし」62人、レムデシビル「あり」0人、レムデシビル「なし」65人。