厚労省 添付文書改訂を指示 インスリン製剤、皮膚アミロイドーシス防止へ注射箇所変更の指導を
公開日時 2020/05/20 04:50
厚生労働省医薬・生活衛生局は5月19日、重大な副作用などが判明した医療用医薬品の添付文書を改訂するよう、日本製薬団体連合会に医薬安全対策課長通知で指示した。インスリン含有製剤やインスリンバイアル製剤の「重要な基本的注意」に追記を求める内容で、インスリン含有製剤では、皮膚アミロイドーシスやリポジストロフィーを防ぐため、注射箇所変更に関する患者への指導内容を追記するよう指示した。また、皮膚アミロイドーシスやリポジストロフィーの発現部位に薬剤を投与した結果、血糖コントロールの不良や低血糖に至ったことも記載し、注意喚起する。
■インスリンバイアル製剤 調製は専用注射器で
インスリンバイアル製剤に関しては、調製時にインスリンバイアル専用の注射器を使用せずに汎用注射器を使用したことで、過量投与に至った医療事故事例が集積されている。このため、添付文書に専用の注射器を使用して調製・投与することを記載し、注意喚起する。
このほか、前立腺がん治療薬アーリーダ錠の重大な副作用に「中毒性表皮壊死融解症」を追記すること、乳がん治療薬フェソロデックス筋注の重大な副作用に「注射部位の壊死、潰瘍」を追記することも指示した。
添付文書の改訂指示があった医薬品は次の通り。カッコ内〈 〉は製品名と製造販売元。
▽インスリン含有製剤
1)インスリン ヒト(遺伝子組換え)
〈ノボリンR注、ノボリン30R注、イノレット30R注、ノボリンN注:ノボ ノルディスク〉
〈ヒューマリンR注、ヒューマリン3/7注、ヒューマリンN注:日本イーライリリー〉
2)インスリン リスプロ(遺伝子組換え)
〈ヒューマログ注、ルムジェブ注:日本イーライリリー〉
3)インスリン リスプロ混合製剤-25
〈ヒューマログミックス25注:日本イーライリリー〉
4)インスリン リスプロ混合製剤-50
〈ヒューマログミックス50注:日本イーライリリー〉
5)インスリン アスパルト(遺伝子組換え)
〈ノボラピッド30ミックス注、ノボラピッド50ミックス注、ノボラピッド70ミックス注、ノボラピッド注、フィアスプ注:ノボ ノルディスク)
6)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)
〈ランタスXR注、ランタス注:サノフィ〉
7)インスリン デテミル(遺伝子組換え)
〈レベミル注:ノボ ノルディスク〉
8)インスリン グルリジン(遺伝子組換え)
〈アピドラ注:サノフィ〉
9)インスリン デグルデク(遺伝子組換え)
〈トレシーバ注:ノボ ノルディスク〉
10)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)[インスリン グラルギン後続1]
〈インスリン グラルギンBS注:日本イーライリリー〉
11)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)[インスリン グラルギン後続2]
〈インスリン グラルギンBS注:富士フイルム富山化学〉
12)インスリン デグルデク(遺伝子組換え)・インスリン アスパルト(遺伝子組換え)
〈ライゾデグ配合注:ノボ ノルディスク〉
13)インスリン デグルデク(遺伝子組換え)・リラグルチド(遺伝子組換え)
〈ゾルトファイ配合注:ノボ ノルディスク〉
14)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)・リキシセナチド
〈ソリクア配合注:サノフィ〉
15)インスリン リスプロ(遺伝子組換え)[インスリン リスプロ後続1]
〈インスリン リスプロBS:サノフィ〉
薬効分類
:249 その他のホルモン剤(全製品)
:396 糖尿病用剤(インスリンリスプロ、インスリングラルギン・リキシセナチド、インスリンデグルデク・リラグルチド)
指示概要:「重要な基本的注意」に、皮膚アミロイドーシス及びリポジストロフィーを防ぐための注射箇所変更に関する患者への指導内容を追記する。具体的には、注射箇所は少なくとも前回の注射箇所から2~3cm離すことなどを記載する。
また、皮膚アミロイドーシスまたはリポジストロフィーがあらわれた箇所に投与した場合、薬剤の吸収が妨げられ十分な血糖コントロールが得られなくなることがあることから、血糖コントロールの不良が認められた場合は、▽注射箇所の腫瘤や硬結の有無の確認し、注射箇所の変更とともに投与量の調整などの適切な処置を行うこと▽血糖コントロールの不良に伴い、過度に増量されたインスリン製剤が正常な箇所に投与されることにより、低血糖に至った例が報告されている――ことを記載し、注意喚起する。
直近3年間の皮膚アミロイドーシス関連症例の国内の集積状況。
1)7)10)=各1例(医薬品と事象との因果関係は評価していない)
2)=7例(同)
3)4)8)9)と11)~15)=0例
5)=4例(同)
6)=8例(同)
いずれも死亡0例
直近3年間の血糖コントロール不良を続発するリポジストロフィー関連症例の国内の集積状況。
1)5)=各1例(同)
2)~4)、7)~15)=0例
6)=2例(同)
いずれも死亡0例
改訂理由:インスリン含有製剤投与後に皮膚アミロイドーシスまたはリポジストロフィーを発現した国内症例が集積し、発現部位への投与に続発する血糖コントロールの不良及び低血糖の症例が確認された。皮膚アミロイドーシス及びリポジストロフィーが血糖コントロールに影響を与えることを示唆する文献が複数確認された。これらの理由から、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
▽インスリンバイアル製剤
1)インスリン グルリジン(遺伝子組換え)
〈アピドラ注:サノフィ〉
2)インスリン リスプロ(遺伝子組換え)
〈インスリン リスプロBS:サノフィ〉
3)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)
〈ランタス注:サノフィ〉
4)インスリン ヒト(遺伝子組換え)
〈ヒューマリンN注:日本イーライリリー〉
5)インスリン ヒト(遺伝子組換え)
〈ヒューマリンR注:日本イーライリリー〉
6)インスリン ヒト(遺伝子組換え)
〈ヒューマリン3/7注:日本イーライリリー〉
7)インスリン リスプロ(遺伝子組換え)
〈ヒューマログ注:日本イーライリリー〉
8)インスリン リスプロ(遺伝子組換え)
〈ルムジェブ注:日本イーライリリー〉
9)インスリン アスパルト(遺伝子組換え)
〈フィアスプ注、ノボ ノルディスク〉
10)インスリン アスパルト(遺伝子組換え)
〈ノボラピッド注、ノボ ノルディスク〉
11)インスリン ヒト(遺伝子組換え)
〈ノボリンR注:ノボ ノルディスク〉
指示概要:「重要な基本的注意」の項に、「インスリンバイアル専用注射器」の使用に関する記載を追記する。具体的には、「インスリン含有単位(UNITS)と液量の単位(mL)を混合することにより、誤ったインスリン量を投与する可能性がある」として、薬剤を調製または投与する場合は、「『単位』もしくは『UNITS』の目盛りが表示されているインスリンバイアル専用の注射器を用いること」と記載する。用法・用量に持続皮下インスリン注入療法(CSII療法)に関連した記載がある製剤では、ポンプの取扱説明書に記載された器具を用いることも記載する。
直近5年間の国内報告事例:19例
改訂理由:日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業により収集・公表された医療事故事例において、インスリンバイアル製剤調製時にインスリンバイアル専用の注射器を使用せずに汎用注射器を使用したことで、過量投与に至った医療事故事例が集積していることから、専門家などの意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
▽アパルタミド(製品名:アーリーダ錠、製造販売元:ヤンセンファーマ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬
指示概要:「重要な基本的注意」の項に、「中毒性表皮壊死融解症」に関する注意喚起を追記。「重大な副作用」の「重度の皮膚障害」の項に、「中毒性表皮壊死融解症(TEN)」を追記。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は2例。医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例は1例。
改訂理由:国内症例が集積されたことから、専門委員の意見も踏まえた調査の結果、改訂することが適切と判断した。
▽フルベストラント(製品名:フェソロデックス筋注、製造販売元:アストラゼネカ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬
指示概要:「重大な副作用」の項に「注射部位の壊死、潰瘍」を追記。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と事象(注射部位の壊死、潰瘍関連症例)との因果関係が否定できない症例は5例。医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例は0例。
改訂理由:国内症例が集積されたことから、専門委員の意見も踏まえた調査の結果、改訂することが適切と判断した。