【特別版】新型コロナ専門家会議 接触割合8割は未達で「長丁場を覚悟」 徹底した行動変容で感染者数を抑え込む
公開日時 2020/05/02 04:51
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は5月1日、緊急事態宣言後の状況分析を行った。それによると緊急事態宣言後の外出自粛や「３密」の回避などにより、「新規感染者数は減少に転じるという一定の成果が現れ始めている」と報告した。ただ、目標とした接触頻度の減少率8割に達成していないと指摘。重症感染者や死亡者の増加を防ぐための医療提供体制の拡充が求められるとし、「この感染症への対応は長丁場を覚悟しなければならない」と強調した。加えて、徹底した行動変容を要請し、新規感染者数を劇的に抑え込むほか、地域間でバラツキのある医療提供体制のキャパシティ拡大を進める必要性を提言した。
緊急事態宣言の期限が5月6日に迫るなか、政府は約1か月程度の期限延長について検討を行っている。この日の専門家会議では、４月7日の宣言発令後の感染状況について「減少傾向にある」と一定の成果を下した。ただ、3月20日を境に急増した感染者数のスピードに対し、現在の減少スピードは「緩やか」と表現。目標に掲げたヒト同士の接触を「最低7割、極力8割」まで減らすには到底達していないとし、さらなる外出自粛を継続する必要性が示された。
◎次なるステージ 「新しい生活様式」への移行をどう判断するか
「この感染症への対応は長丁場を覚悟しなければならない」－。記者会見に臨んだ尾身茂副座長（地域医療機能推進機構理事長）はこう述べた。5月7日以降、緊急事態宣言の期限を延長しても、徹底した行動制限は避けられない。引き続き接触機会8割の徹底を改めて求めることになる。ただ、いつまで「厳しい行動制限」を維持するか、いつ緩和するかの判断が新たに求められる。さらに行動制限を緩和した際の「新しい生活様式」への移行をどのように進めるかも次なるステップへの課題と言える。専門家会議としては、全国一律ではなく、地域ごとに「感染状況が厳しい地域」と「新規感染者数が限定的となった地域」の２つが混在するだろうと予測し、それぞれの地域に見合った施策の必要性を指摘している。
◎行動制限の緩和で考慮すべきこと 「疫学的状況」と「医療状況」
尾身副座長は、行動制限の緩和に際し考慮すべき要素にも触れた。具体的には、①感染が一定範囲に抑えられていること（疫学的状況）、②医療提供体制が確保できていること（医療状況）－の２点をあげた。疫学的状況については、新規感染者数と倍加時間等の水準が十分に抑えられていることが条件となる。加えて必要なPCRなどの検査が迅速に実施できることをあげている。PCR検査については、諸外国に比べてPCR検査の実施が限定的との指摘もある。専門家会議としては、検査件数が徐々に増加するなかで、「陽性者数が全国的に減少傾向にある」、「東京などで倍加時間が伸びている」として、現状の検査体制で「新規感染者が減少傾向にあることは間違いない」と結論づけていた。
◎「コロナ専門病院」の設置など医療機能の明確化
一方、行動変容の要請を緩和する際に考慮すべき「医療状況」も示した。具体的には、地域単位で医療機関の役割分担の明確化や患者搬送の調整機能が確立していることをあげた。コロナ専門病院の設置などを想定している。また都道府県の調整機能の確保や、患者搬送コーディネーター等の設置を求めている。これまでは感染患者を診る医師など医療従事者が自ら患者受入れや搬送などの調整を行ってきたが、これからは専門の患者搬送コーディネーターを配置するなどを求めている。さらに軽症者の宿泊療養施設の確保なども重要になる。
◎地域ごとに医療提供体制のキャパシティ拡大への取り組みを
専門家会議の尾身副座長は、「早期診断から重要化予防までの治療法の確立に向けて明るい機材が見えつつある」としながらも、引き続き徹底した行動変容の要請で新規感染者数を抑え込むことが求められると強調した。また、行動変容を緩和した際に、「地域で感染が再燃すれば医療提供体制への更なる負荷となる」とし、感染者数の抑え込みと同時に、医療提供体制のキャパシティの拡大を図る取り組みを地域単位で進めて欲しいと要請した。