サノフィとGSK 新型コロナウイルス感染症のワクチン開発で提携 21年下半期の実用化目指す
公開日時 2020/04/23 04:49
仏サノフィと英グラクソ・スミスクライン(GSK)は4月22日、両社の技術を活かして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアジュバント添加ワクチンを開発する同意書に署名したと、日本法人を通じて発表した。署名は現地時間4月14日付。両社は2020年下半期にフェーズ1試験を開始する予定で、これに成功すれば、規制当局による審査を経て、21年下半期までに実用化できるよう開発を進める。世界トップクラスのワクチン企業2社が協力して、COVID-19ワクチンの開発を加速させる。
両社は、サノフィのワクチン事業部門グローバルヘッドのデヴィッド・ロウ氏と、GSKグローバルワクチンプレジデントのロジャー・コナー氏が共同議長を務める共同タスクフォースを設置した。タスクフォースは、両社のリソースを動員し、ワクチン候補の開発を加速するあらゆる機会を模索する。両社は「前例のない提携を開始」したとしている。
サノフィは、ウイルスの表面に検出されたタンパク質と正確に一致する遺伝子配列を作成できる遺伝子組換えDNA技術をベースとする、S-タンパク質COVID-19抗原を提供する。
GSKはアジュバント技術を提供する。アジュバントは免疫応答を高めるために一部のワクチンに添加するもの。1回の接種に必要なワクチン用タンパク質の量を抑えられるため、ワクチンの生産量を増やすことができる。同社は、「アジュバントの使用はパンデミックの状況下では特に重要」だとしている。
■未曾有の医療危機 企業単独で対処することは不可能
サノフィのポール・ハドソンCEOは、「世界は未曾有の医療危機に直面しており、1つの企業が単独で対処することは不可能」との認識を示し、「サノフィは、GSKなどの業界他社と協力し、自社の専門知識とリソースを補完することで、十分な数量のワクチンを作り出して供給するという目標に向けて取り組んでいる」とコメント。
GSKのエマ・ウォルムズリーCEOは、「世界トップクラスのワクチン企業2社が協力することになる。両社の科学的専門知識、技術、能力を組み合わせることにより、ワクチンを開発する世界的な取り組みを加速し、できるだけ多くの人々をCOVID-19から守りたい」とコメントした。
■各国政府と財政支援の協議進める
サノフィが今回提供するS-タンパク質COVID-19抗原の開発は、米国保健福祉省事前準備・対応担当次官補局の一部門である米国生物医学先端研究開発局(BARDA)の協力の下で、同局の資金提供を受けて実施されている。両社は、米国以外の政府や国際機関からの財政支援について協議を進める予定だとしている。
BARDAのディレクターであるリック・A・ブライト氏は、「コロナウイルスのワクチンをできるだけ早く提供するには、ワクチン業界のリーディングカンパニーによる戦略的提携が不可欠」とし、「COVID-19に対するアジュバント添加遺伝子組換えワクチン候補を開発すれば、ワクチンの用量を減らし、より多くの人々にワクチンを提供し、このパンデミックを収束させ、将来的なコロナウイルスの流行に適切に備えるだけでなく、予防することも可能になるだろう」としている。