BCGワクチン 新型コロナへの適応外使用は「再考を」 定期接種の安定供給に懸念
公開日時 2020/04/10 04:51
新型コロナウイルス感染症の予防にBCGワクチンが有効とする声があがるなかで、日本ビーシージーは適正使用を呼びかけている。BCGワクチンの出荷量が例年以上に増加するなかで、効能・効果を有する、結核予防としての乳幼児の定期接種に影響が出る恐れが出始めている。同社は、この状態が続くと、「乳幼児に対する定期接種の供給に影響を及ぼす可能性がある」と指摘。「結核予防以外の使用に対する有効性・安全性は確立していない」として、新型コロナウイルス感染症予防への適応外使用については、「今一度、ご再考いただきたい」と呼びかけている。
日本ビーシージーは、「適応外使用における重大な誤接種の報告も受けている」ことも指摘している。BCG ワクチンは管針を使用する特殊な接種方法(経皮接種)で、「禁注射」製剤だ。また、調製した懸濁液は非常に高濃度であり取り扱いには十分な注意が必要とされており、定期接種を行う医療機関は自治体から研修を義務付けられているケースも多いという。
◎現時点では仮説 高齢者への知見は「十分とは言えない」
世界的に新型コロナウイルス感染症の拡大が続くなかで疫学的に、日本をはじめ、BCGワクチンを幼少期に接種した国で、新型コロナウイルス感染症の患者数や重症者数が少ないことが指摘されている。オーストラリアなどでは、BCGの有用性を検証する治験をスタートさせている。まだエビデンスは確立されておらず、”BCGワクチンが新型コロナウイルスの感染を予防する”というのは、現時点では「仮説」に過ぎない。ただ、新型コロナウイルスに対する治療薬やワクチンが確立されていないなかで、高齢者をはじめとした一般の人から接種を要望する声が強まっている状況にある。
こうした状況を踏まえ、日本ワクチン学会、日本小児科学会、日本結核・非結核性抗酸菌症学会は相次いで適正使用を求める声明を発表した。日本ワクチン学会は、「“新型コロナウイルスによる感染症に対して BCG ワクチンが有効ではないか”という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない」と強調。「本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児への BCG ワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない」と訴えている。特に、高齢者については「知見は十分とは言えない」としている。
日本結核・非結核性抗酸菌症学会は、「日本高齢者、免疫力の乏しい易感染者に接種することで、BCG 自体による全身性感染症を含む、重篤な副反応が生じる事例がある」ことも指摘している。