厚労省 再生医療等製品2製品を承認 SMA遺伝子治療用製品ゾルゲンスマなど
公開日時 2020/03/23 04:52
厚生労働省は3月19日、再生医療等製品として、ノバルティスファーマの脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療用製品・ゾルゲンスマ点滴静注と、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの自家培養角膜上皮・ネピックの2製品を承認した。
ゾルゲンスマは米国に次ぐ2か国目の承認となる。2歳未満に用いるもので、早期死亡や生涯続く障害を伴うSMAに対する初の1回完結型治療となる。米国のメーカー出荷価格(卸購入価格)は212万5000ドル。1ドル110円換算すると約2億3400万円と超高額で、日本での価格に注目が集まりそうだ。両製品とも、5月頃にも中医協で保険償還価格が決まる見通し。
ネピックは、眼科領域における国内初の再生医療等製品となる。
承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ゾルゲンスマ点滴静注(オナセムノゲン アベパルボベク、ノバルティスファーマ):「脊髄性筋萎縮症(臨床所見は発現していないが、遺伝子検査により脊髄性筋萎縮症の発症が予想されるものを含む)。ただし、抗AAV9抗体が陰性の患者に限る」を効能・効果とする。
患者にSMN遺伝子を導入することで、体内でSMNタンパクを産生させ補充し、神経・骨格筋の機能を改善することによりSMAの治療を行う。欠陥のあるSMN1(生存運動ニューロン)遺伝子を効果的に置き換えることでSMAの遺伝的根本原因に対処する、ファーストインクラスの治療法となる。
日本では、2歳未満で体重2.6kg以上の患者に対し、体重に基づき算出された投与液量を、60分かけて静脈内に単回投与して用いる。再投与はしない。国内の治験症例は3例と極めて限られている。使用実態下で、同剤を2歳未満のSMA患者に投与したときの長期の安全性及び有効性を検討することを目的に、観察期間を最長15年間とした全例調査を行う。
今回の承認は、SMA患者を対象に実施したCL-101試験、CL-102試験、CL-303試験、CL-304試験、LT-001試験――の5試験の結果に基づくもの。
このうちCL-101試験(I型SMA患者を対象とした海外フェーズ1試験)では、13.6か月齢時の永続的な呼吸補助を必要としない生存率は、全例(n=15)で100%であり、ゾルゲンスマはSMAの自然経過に関する研究のPediatric Neuromuscular Clinical Research(PNCR)における未治療の集団と比較して、永続的な呼吸補助を必要としない生存率を改善した。同試験の投与後24か月時において、承認用量群(n=12)の11例は、「3秒以上支えなしに頸定を保持する」、「支えありで座る」、「5秒以上支えなしで座る」、10例は「10秒以上支えなしで座る」、9例は「30秒以上支えなしで座る」、「寝返りをする」、2例は「補助ありで立つ」、「自力で立つ」、「補助ありで歩行する」、「自力で歩行する」ことが可能となった。
SMAを対象とした臨床試験でゾルゲンスマが投与された82例(日本人2例含む)のうち35例(42.7%)に副作用が認められた。主な副作用は、AST増加9例(11.0%)、ALT増加、トランスアミナーゼ上昇及び嘔吐が各6例(7.3%)だった(19年3月8日データカットオフ)。重大な副作用としては、肝機能障害(19.5%)、肝不全(頻度不明)、血小板減少症(6.1%)が報告された。
日本の添付文書では、重大な副作用として▽肝機能障害(19.5%)▽肝不全(頻度不明)▽血小板減少症(6.1%)――が明記され、肝機能障害患者では肝機能障害を悪化させるおそれがあるとして、「慎重に適用すること」とされている。
▽ネピック(ヒト(自己)角膜輪部由来角膜上皮細胞シート、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング):「スティーヴンス・ジョンソン症候群患者や眼類天疱瘡患者などを除く角膜上皮幹細胞疲弊症」を効能・効果とする。
ネピックは、患者自身の角膜輪部組織を採取し、分離した角膜上皮細胞を培養し、シート状に形成して患者自身に使用する「自家培養角膜上皮」。患者の角膜輪部領域を含む眼表面に適用し、角膜上皮を再建する。眼科領域では国内初の再生医療等製品となる。同製品の販売は、眼科医療機器メーカーのニデックが行う予定。
なお、海外で承認されている国・地域はない。