MRから医師へのメール 平時の3倍に 新型コロナでの訪問自粛受け MCI調べ
公開日時 2020/03/10 04:52
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、医療機関へのMR訪問の自粛や、MRを含めて在宅勤務を基本とする製薬企業が相次いでいるなか、MRによる情報提供手段としてメールを利用する頻度が平時の3倍になっていることが、医薬品マーケティング支援会社エム・シー・アイ(MCI)の調べでわかった。製薬企業8社のMRから医師へのメール送信実績を確認したところ、週ごとの1日あたり平均メール件数は、平時の5000件前後に対し、直近の3月1週目は約1万5000件となっていた。MCIによると、メールのほとんどが訪問自粛の案内や、医師の関心が高いであろう情報のコンテンツを配信する内容だとしている。
文末の「関連ファイル」に、週ごとの1日平均メール件数の推移の図を掲載しました(3月10日のみ無料公開、その後はプレミア会員のみ閲覧できます)。
武田薬品が2月17日に、「可能な限りの在宅勤務」を推奨するとのガイダンスを出したと発表したことを皮切りに、製薬各社から新型コロナウイルス感染症への対応策が相次ぎ公表されている。
MCIは製薬企業向けに「MRmail」と呼称するeディテーリングシステムを提供している。「MRmail」は、製薬企業のマーケティング部門が企画した様々なデジタルコンテンツ群から、現場のMRが担当医師にとって最適と思われるものを選別し、メール配信できるもの。MRは医師が閲覧したかどうかの情報や、医師からの返信をダイレクトに受け取れる。
「MRmail」は現在、内資系6社、外資系2社の計8社が利用している。8社のMRによる医師へのメール送信実績を確認したところ、2月2週目(2~8日)の1日あたり平均メール件数は5422件、3週目(9~15日)は同4458件、4週目(16~22日)は同5699件、5週目(23~29日)は同7797件――と、2月下旬にいくほど送信件数は増加した。そして、3月1週目は3月5日までの実績として、同1万4859件だった。3月1週目の実績は過去最高という。1日あたりの送信メール件数は、最多は3月2日の2万8853件だった。
■リモート面談できないか
医療機関へのMR訪問の自粛などを受け、「MRmail」の利用企業からカスタマイズなどの要望も相次いでいるようだ。例えば、メール送信する前に、現場MRが紙やタブレット型端末で許諾のサインをもらっているが、これを遠隔で医師と対面せずに電子署名が取得できるようにしたいとの要望が複数社から挙がっているという。
MRによるメールの利用頻度が高まっていることから、複数のMR(共同担当者)に医師の開封通知・閲覧通知がいく仕組みの一時停止や、訪問自粛の案内文のテンプレートを選択・挿入できるようにしたいとの要望も複数社からある。また、医師がメールのバナーをクリックすると、そのまま担当MRとリモート面談できるようにカスタマイズしたいとの声もあり、MCIと当該企業との間で検討中だとしている。
■メディカルコンテンツを増やしたい
ほぼ全社から、医師向けのメディカルコンテンツを増やしたいとの要望も挙がっているという。これまではキーオピニオンの医師を取材したり、講演会動画を撮影するなどしてコンテンツ化していたが、新規コンテンツの制作が困難な状況にある。MCIでは例えば、海外ジャーナルに掲載されているオンコロジー関連のクイズなどを医師の生涯学習コンテンツとして導入しており、コンテンツを増やしたいとの要望に応えていく考えだ。