米メルクは２月６日、分社化して、婦人科領域（ウィメンズ・ヘルス）、長期ブランド製品、バイオシミラー（BS）を扱う新会社を設立すると、日本法人であるMSDを通じて発表した。分社化の全ての手続きを2021年前半までに完了させる予定。米メルクはオンコロジー、ワクチン、病院製品、主要な糖尿病治療薬、動物用医薬品を扱い、研究開発主導型のバイオ医薬品のトップ企業を目指す。新会社はウィメンズ・ヘルス領域やBSのリーディングカンパニーを目指す。なお、米メルクと新会社との資本関係はなくなるとみられる。

日本法人であるMSDも基本的にはグローバルの方針に沿った対応をとるが、詳細は未定という。

米メルクは今回の分社化により、「それぞれの会社が重点を強化することにより、患者さんと顧客のニーズに更に対応することができるようになる」と選択と集中をより強化できるとした。そして、「結果として、より迅速な成長が期待でき、全てのステークホルダーに、より大きな価値を提供することができる」と意義を説明した。複雑性を軽減し、効率性を図る簡素化されたオペレーティングモデルをもたらし、戦略的優先順位を追求して株主により大きな利益をもたらす最適な資本構造と資源配分が可能になるとしている。

分社化により、米メルクは「営業利益率の大幅な拡大を見込んでいる」とし、24年までに営業利益率40％以上を目指す。24年までに15億ドル超の業務効率化が追加で達成できるとする一方で、主要な成長ドライバーとパイプラインへの投資を「引き続き増加させる」としている。

■ゼチーアなど一部の循環器疾患治療薬も移管

新会社は本社を米国ニュージャージーに置く。社名は未定。従業員数は約１万～１万1000人で、米メルクの15％程度に相当する。新会社に分離される製品売上は20年ベースで約65億ドル。米メルクの19年連結売上は468億ドルだったため、単純計算すると14％程度に相当する。新会社は21年を基準として約60～65億ドルの売上からなる企業となり、１ケタ台前半の成長を見込んでいる。

新会社の取扱製品は、避妊及び不妊治療を柱とするウィメンズ・ヘルス領域のほか、提携先の韓国サムスングループのサムスン・バイオエピス社とともに、▽インフリキシマブ▽エタネルセプト▽トラスツズマブ――などのBSを扱う。BS事業では、「リーディングカンパニーとしての地位を確立する」との方向を示した。

特許期間に関わらず長期に顧客からの信頼を獲得している「長期ブランド製品群」も扱う。対象となるのは皮膚疾患、疼痛、呼吸器疾患、高脂血症治療薬ゼチーア（エゼチミブ）及びその配合剤バイトリン（エゼチミブ/シンバスタチン）など一部の循環器疾患治療薬――などとなる。MSD広報部は本誌取材に、日本市場における新会社への移管製品は、「これから検討する」としたが、グローバル方針に沿う対応となる可能性が高いとみられる。

■米メルク　主な取扱製品はオンコロジー、ワクチン、病院製品、動物用薬

分社後の米メルクはオンコロジー、ワクチン、病院製品、動物用薬といった現在の成長の柱を維持し、画期的なイノベーションの研究開発に継続して投資する。主な取扱製品は、がん免疫療法薬キイトルーダ（ペムブロリズマブ）、抗がん剤リムパーザ（オラパリブ）、同レンビマ（レンバチニブ）、子宮頸がんワクチンのガーダシル（組換え沈降４価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン、筋弛緩剤ブリディオン（スガマデクスナトリウム）、抗生物質製剤ザバクサ（タゾバクタムナトリウム/セフトロザン硫酸塩）、BRAVECTO（fluralaner）、主要な糖尿病領域製品――となる。

分社化により、米メルクが製造販売するヒト用医薬品は約50％減少するが、これにより成長製品を支える、より焦点を絞った事業モデルが可能になるとしている。

米メルクのケネス・C・フレージャー会長兼CEOは、「これまで以上に選択と集中をすることで患者さんが恩恵を受けることができると考えている。同時に更なる資源の投下と集中により、多くの信頼されている医学的に重要な製品を含む米メルクの広範なポートフォリオの可能性を最大限発揮することに役立つものと確信している」とコメントした。