循環器病対策推進基本計画を今夏にも策定 厚労省・協議会が初会合
公開日時 2020/01/20 04:51
厚生労働省は1月17日、第1期循環器病対策推進基本計画を今夏にも策定することを明らかにした。2019年12月に循環器病対策基本法が施行されたことを受けたもので、同日、初会合を開いた「循環器病対策推進協議会」で議論を進める。日本人の死亡原因の第2位が心疾患、第4位が脳血管疾患となり、さらに高齢化が進展するなかで、寝たきりの増加が深刻な影を落とすなか、対応に迫られていた。会議冒頭で挨拶した加藤勝信厚労相は、法施行を受け、「予防、医療、福祉サービスまで幅広い循環器病対策を総合的に推進する」と強調した。救急医療の体制整備に加え、人材育成や予防、リハビリなど総合的な施策の立案で、切れ目のない体制整備の構築を急ぐ。
◎21年4月以降の医療計画・介護事業計画に反映
「急性発症する循環器病は再発、悪化を繰り返し、患者の生活にも多大な影響を与える。こうしたなか健康寿命の延伸などを図る、脳卒中心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法を制定した」―。加藤厚労相は循環器病対策基本法の主旨をこう説明した。脳血管疾患、心疾患は死亡率が高いだけではない。介護が必要となった原因でも脳血管疾患16.6%、心疾患4.6%と、両疾患をあわせると全疾患で最多となる。寝たきりを防ぎ、健康寿命の延伸を実現するためにも、早期に適切な治療を行い、社会復帰につなげることが求められていた。
国は、今夏にも1期循環器病対策推進基本計画を策定し、国会に報告する。これを踏まえ、都道府県が各地域の現状に合致した「循環器病対策推進計画」を策定。21年4月にも予定される各自治体の策定する第7次医療計画(都道府県策定)の中間見直し、第8期介護保険事業計画(市町村策定)に盛り込む方針だ。2006年にがん対策基本法が施行され、地域でのがん医療提供体制構築が進んだが、これをひとつの参考に、地域の医療提供体制構築にアクセルを踏みたい考えだ。
◎心臓リハビリの普及や予防などの重要性も
この日は、日本脳卒中学会や日本循環器学会、日本心臓血管外科学会、日本救急医学会など関連学会に加え、仙台市消防局、日本作業療法士協会や日本言語聴覚士協会など、9団体からヒアリングを行った。
脳梗塞の超急性期で有効なrt-PA静注療法の実施をめぐっては、施設要件・医師要件ともに高い専門性のハードルがある。一方で、発症後投与が可能な時間が限られており、時間との闘いでもあることから、救急搬送体制の策定の重要性は従来から指摘されてきた。日本救急医学会は、「適切な時間内に適切な医療機関へ搬送するルールを早急に確立する」必要性を指摘。「病院前救護(=地域の救急隊)と医療機関情報、病院間同士の画像を含めた医療情報をリアルタイムに把握できるシステム整備を全国的に推進する必要がある」と主張した。
急性期をめぐる議論だけでなく、リハビリや国民の疾患啓発などの意見もあがった。日本循環器学会は、入退院を繰り返す心不全患者が多い現状を踏まえ、「超急性期・急性期・回復期・維持期のリハビリテーション制度の整備」の必要性を求めた。磯部光章委員(榊原記念病院院長)も、「心臓リハビリテーションは効果が有効であるものの、外来や在宅での普及率が低くなっており、問題だ。心不全の患者は高齢者で、フレイル対策という点からもリハビリが重要だが、浸透させていくためには課題がある」と指摘した。
国民への疾患啓発の重要性を指摘する声も複数あがった。熊谷雅美委員(公益社団法人日本看護協会常任理事)は、「循環器病は予防できる疾患のため、食育などを含めた小さい時からの教育が大事」と述べた。