武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは10月31日、東京本社で2019年度第2四半期決算発表会見に臨み、グローバルブランド14製品の売上収益が前年同期比21%増を確保したと報告した。コア営業利益は5416億円で前年同期比155.6%増、シャイアー統合に伴うコストシナジーやグローバル経費削減イニシアティブ、さらには製品構成の改善が寄与したことで実質的なコア営業利益率は32.3%を確保した。これにより19年度通期予想は利益、利益率ともに上方修正した。
ウェバー社長は19年度上期ハイライトとして、「14のグローバルブランド製品がどれも成長している」と胸を張った。前年同期比21%増の原動力となったエンティビオは33.9%増、アルブミン製剤は16.9%増、ニンラーロは32.7%増といずれも業績の伸長に寄与した製品だ。エンティビオは潰瘍性大腸炎におけるアダリムマブとの初めての直接比較データが公開されたことなどから、米国、欧州、カナダ、新興国市場において二桁台の実質的な売上収益を確保した。
一方、同社が掲げる5つのビジネスエリアごとの売上収益は、消化器系疾患が9%増、オンコロジーが11%増、ニューロサイエンスが6%増、血漿由来の免疫疾患治療が4%増の成長を確保したものの、希少疾患は11%減となり、中でも希少血液疾患の想定内の減収により相殺した。ウェバー社長は会見で「5つのビジネスエリアにおけるポートフォリオが売上収益の79%を占める」と述べた上で、「我々は1品目。2品目に頼って成長するのではない。こうしたポートフォリオこそが収益を支える力になる」と強調した。
このほか通期予想の上方修正についてウェバー社長は、「コストシナジーや営業経費の効率化、製品ミックス改善により上期の実質的なコア営業利益率を32.2%確保できた」と述べた。さらに、5845億円(55億米ドル)の負債を返却し、純有利子負債/調整後EBITDA倍率が18年度末の4.7倍から19年9月末時点で3.9倍に減少したことなどをあげた。
◎岩﨑JPBUプレジデント「その時、その先の体制に向けて動いている」
岩﨑真人取締役ジャパンファーマ ビジネスユニットプレジデントは日本市場の上期決算について、「いま私たちが発売している製品の殆どが確実に成長している」と強調した。また、「日本でプライマリケアの製品は、やはり成長しているし、市場のニーズも大いにある」と述べながらも、「私たちの意図とは関係なく、いずれジェネリック品が出てくる」との見方を披露し、今後の薬価・医療政策などによりマーケット環境が変わる可能性も滲ませた。
その上で岩﨑プレジデントは、「日本が向かっている方向と我々は完全に一致している」と強調。骨太方針2019に描かれた「高い創薬力をもつ産業構造に変えていく」ことを踏まえると、「オンコロジーやスペシャリティへの事業転換がこれからのカギになる」と述べた。さらに「これまでも武田薬品はかなりフレキシブルに組織の形を変えてやってきた。その時、その先の体制に向けて動いている。その辺はいままで通りのやり方で進めていきたい」と語った。
【連結業績 (前年同期比) 19年度通期予想(前年同期比)】
売上収益 1兆6601億6900万円(88.5%増) 3兆2600億円(55.4%増)
営業利益 503億1000万円(70.7%減) △1100億円←修正前△1660億円
税引前利益 △275億5700万円(-) △2730億円←修正前△2900億円
【グローバル主要製品売上(前年同期実績) 億円】
(消化器系疾患)
エンティビオ 1684(1284) 31.2%
デクスラント 311(349) △10.9%
パントプラゾール 244(307)△20.4%
タケキャブ 350(272) 28.3%
Gattex/Revestive 293(-)
ペンタサ 130(-)
リアルダ/Mezavant 122(-)
アミティーザ 151(163) △7.2%
Resolor/Motegrity 27(-)
その他 103(146) △29.2%
(希少代謝性疾患)
エラプレース 355(-)
リプレガル 255(-)
ビプリブ 187(-)
Natpara 124(-)
(希少血液疾患)
アドベイト 832(-)
アディノベイト 298(-)
ファイバ 278(-)
Hemofil/mmunate/Immunine 121(-)
その他PDT製品 11(-)
その他 206(-)
(遺伝性血管浮腫)
フィラジル 153(-)
Takhzyro 307(-)
Kalbitor 24(-)
Cinryze 120(-)
(血漿分画由来の免疫疾患)
免疫グロブリン 1465(59)
アルブミン 341(8)
その他 111(13)
(オンコロジー)
ベルケイド 636(649) △1.9%
リュープロレリン 566(551) 2.8%
ニンラーロ 383(294) 30.2%
アドセトリス 258(211) 22.1%
アイクルシグ 147(142) 3.7%
アルンブリグ 34(23) 48.3%
ベクティビックス 116(105) 10.2%
その他 9(10) △12.1%
(ニューロサイエンス)
バイバンス/ビバンセ 1315(-)
トリンテリックス 346(271) 27.6%
Adderall XR 106 (-)
ロゼレム 87(101) △14.2%
レミニール 90(84) 7.4%
インチュニブ 80(-)
その他 114(8)
(その他)
アジルバ 387(352) 9.9%
ネシーナ 286(268) 6.6%
ユーロリック 141(265) △46.9%
コルクリス 131(163) △19.5%
エンブレル 159(181) △11.9%
ロドリガ 160(152) 4.9%
【国内主要製品売上(前年同期比) 億円】
(消化器系疾患)
エンティビオ 25
タケキャブ 347 27.9%
その他 8 △48.6%
(希少代謝性疾患)
エラプレース 7
ビプリブ 8
(希少血液疾患)
アドベイト 40
アディノベイト 75
ファイバ 9
その他 15
(遺伝性血管浮腫)
フィラジル 3
(オンコロジー)
リュープロレリン 206 2.5%
ニンラーロ 25 21.7%
アドセトリス 39 80.2%
ベクティビックス 116 10.2%
(ニューロサイエンス)
ロゼレム 56 18.1%
レミニール 90 7.1%
インチュニブ 36
その他 25
(その他)
アジルバ 387 9.9%
ネシーナ 143 0.2%
エンブレル 159 △11.9%
ロドリガ 160 4.9%