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帝人ファーマ・渡辺社長 全MRを帝人在宅医療に「出向」 支店・営業所も統合 “チーム営業”構築へ

公開日時 2019/09/06 03:52
帝人ファーマの渡辺一郎社長は9月4日、本誌と会見し、全MRが在宅医療事業を展開する100%子会社「帝人在宅医療」に出向することを明らかにした。出向は10月1日付。MRも帝人在宅医療の営業担当者らとともに在宅医療現場に入り、在宅医療や患者への理解を深める。地域包括ケアの進展に伴う地域完結・在宅完結型医療における顧客ニーズをいち早くキャッチし、帝人グループとしてソリューションを開発・提供する考えだ。MRと在宅医療事業に所属する多職種との有機的な連携も推進し、患者中心の“チーム医療”を、“チーム営業”で支援する姿も目指す。

インタビュー全文は、ミクス19年10月号(10月1日発売予定)と、9月下旬にミクスOnline(有料会員向け)に掲載します。


渡辺社長は、「当社としてやりたいことは、多くの方が地元で健康長寿を実現し、最期を自宅で全うできる仕組みづくりへの貢献」と強調した。帝人ファーマではもともと医薬事業と在宅医療事業を展開しており、「当社のような会社はなかなか見当たらない。当社の強みだ」と話した。

この強みをより生かすため、また政府が地域包括ケアの整備や在宅医療を推進する方針のため、10月1日付で両事業の組織を再編することにした。組織再編は9月2日に発表済み(記事はこちら)だが、渡辺社長はこの日、再編の詳細や意義、展望を語った。


■20年4月に帝人在宅医療の社名も変更

10月以降、帝人ファーマの営業本部は▽営業企画・支援部門▽帝人在宅医療――で構成する。帝人在宅医療に、帝人ファーマのMRを含む営業職を集約・一元化する。MRは出向扱いとなるため、渡辺社長は「給与などの待遇は今までと同じ」と述べた。帝人在宅医療との社名は20年4月を目途に変更する予定。

■問題発見型の営業が「非常に大事」

渡辺社長は、“Patient is first”の精神で、「自ら考え、自ら行動する創造的営業集団」を構築することに意欲を示した。MRなど営業担当者を中心に、エリアにおけるチーム医療の状況や顧客ニーズを把握し、エリアのコーディネーターとしてソリューションを提供する絵を描いているという。

帝人在宅医療には営業担当約450人のほかに、患者宅で在宅酸素などの医療機器の設定・保守などを行うスタッフ(社内では「ケア職」と呼称)が約400人、看護師や技師など医療職が計約140人いる。地域包括ケア時代により重要性が増すチーム医療に対して、帝人は最適なスタッフで対応する“チーム営業”でサポートできる体制を目指す。

地域包括ケア時代のソリューションのひとつとして既に、患者情報をパソコンやスマホなどを介して多職種間で共有する医療・介護多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」を提供・運用している。ネットとリアルの融合にも今後、積極的に取り組む。顧客ニーズに対するソリューションが存在しない場合は、帝人グループのノウハウを結集して開発していくが、場合によっては他社とも協業し、患者貢献を第一に考える。

一方、MRは現在560人(コントラクトMR除く)いる。MRは10月以降、在宅医療事業のスタッフに同行し、在宅医療や患者を実感できるようにする。MR出身でもある渡辺社長は、「やはりMRをやっていると、患者さんの顔はなかなか見えない」とし、「患者さんのためにどのような提案ができるのか、どのような“チーム営業”ができるのか、医療現場でのOJTで多くを学べると思う」と話した。

さらにMRは、在宅酸素療法(HOT)や睡眠時無呼吸症候群の治療に用いるCPAP(シーパップ)といった医療機器の営業方法も習得する。

地域包括ケア時代では地域ごとに課題や医療ニーズは異なるとされる。このため、「問題発見型の営業が非常に大事になる」(渡辺社長)と見通し、在宅医療や患者に直に接する営業の実現が顧客ニーズの把握に大きくプラスに働くとも指摘した。

■在宅医療の営業担当 全員MR資格取得へ

在宅医療事業の営業担当(約450人)全員に、MR資格を取得させる方針だ。現在の取得率は6割となっている。

同営業担当は10月以降、医療用医薬品の各種規制や、吸入ステロイド薬オルベスコや去痰剤ムコソルバンといった呼吸器疾患用薬の知識の習得にまず取り組む。医療用薬の情報提供・収集活動方法やプロモーション方法も学ぶ。渡辺社長は、「医薬、在宅の営業担当は互いに情報交換し、理解を深めなければ、チーム医療を支えるチーム営業はできない」と述べた。

■KPIに患者貢献度、地域への貢献度を検討

担当エリアの健康長寿や地域包括ケアの実現への貢献を推進するため、KPIを見直す。渡辺社長は、「将来的には評価体系を変えないといけない」との認識を示し、例えば、▽患者への貢献度▽地域に対する貢献度▽チーム評価――といった指標を検討していく構えをみせた。現在は個人に対する定量評価(売上など)と定性評価(行動など)をしているが、「まずは定性評価のウェートを上げないといけない」と語った。可能な限り早く行動変容を促したい意向だ。

営業拠点は医薬事業、在宅医療事業とも現在12支店70営業所体制で、計24支店140営業所あるが、10月以降の新体制ではまず12支店70営業所に統合する。そして、全国に約340ある二次医療圏を例えば130~140程度に分けて再度、営業所を増やす計画だ。21年度までに実施する。渡辺社長は、「患者さんの見守りをしていける体制を作りたい。地域密着型でやっていきたい」と述べるとともに、医療環境の変化の先を見据えた新事業への展開に意欲をみせた。
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