近畿大・工藤教授 肝細胞がんへの適応拡大のサイラムザ 認容性高く高齢者に期待
公開日時 2019/08/02 03:50
近畿大学医学部消化器内科学の工藤正俊主任教授は8月1日、日本イーライリリーの肝細胞がん治療薬サイラムザ(一般名:ラムシルマブ(遺伝子組み換え))について、治験データを踏まえ、認容性が高く、「高齢の日本人患者にも向いている薬ではないか」と意義を強調した。同剤は19年6月に、「がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能な肝細胞癌」に対する適応を追加で取得している。
同剤は血管新生阻害剤で、がんの転移や増殖に関わる血管新生を促すVEGF受容体2(血管内皮細胞増殖因子受容体2)を阻害し、効果を発揮する。すでに胃がん、直腸がん、肺がんの治療薬として承認を取得していた。
同剤の国際共同試験では、分子標的治療薬・ソラフェニブ(先発品名:ネクサバール錠、バイエル)に不耐容、又はソラフェニブによる治療中や治療後に増悪した切除不能な肝細胞がん患者のうち、ベースライン時の血清AFP値が400ng/mL以上の患者292人を対象に、全生存期間(OS)を検討した。その結果、プラセボ投与群95人の7.3月に対し、同剤投与群197人では8.5月となった。
結果について工藤教授は、同試験に参加した患者のベースラインAFP値は、プラセボ群では2741ng/mLだったのに対し、同剤投与群では3920ng/mLだったと指摘。「AFP値が高かったにもかかわらず、有効性が高かった」と意義を強調した。そのうえで相対Dose Intensityの値が同剤投与群では97.9%、日本人患者に限った場合でも98.4%で、認容性が確認されたと説明した。
一方、有害事象の結果から、「高血圧症状が出やすく、腹水や肝性脳症には少し注意が必要」と指摘した。