GE薬協 「ポスト80%時代」の次世代産業ビジョン 健康・医療・介護で存在感発揮へ
公開日時 2019/07/08 03:51
日本ジェネリック製薬協会政策委員会は7月6日、長崎市で開かれた日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会学術大会で、後発品数量シェア「ポスト80%」時代に向けた次世代産業ビジョンの概要を公表した。AI(人工知能)やIoTなどが引き起こすSociety5.0社会を見据え、2030年、40年の姿を“未来年表”としてまとめ、その姿からバックキャストし、国民の「健康・医療・介護」において存在感を発揮するジェネリック産業像を描いた。製剤技術と生産技術といったジェネリックメーカーの強みを活かし、未病のケア・予防に取り組み、健康寿命の延伸に貢献し、医薬品に限らず新たな価値創出を目指す。特許後の市場は長期収載品との垣根がなくなることも見通し、後発品ではなく“特許期間満了医薬品(仮称)”と位置づけ、「社会インフラとして社会に貢献する」覚悟も表明した。
政府が描くSociety5.0社会とは?-。遠隔診断された疾患の発症予測がスマホに送られてくる。再生医療による治療や、3Dプリンターを活用したテーラーメード医療が実現する。車に乗るだけで血圧や心拍数、血糖値などバイタルを自動でとり、必要に応じてドローンが薬を届けに来る―。この問いかけに対する答えを、産業ビジョンの具体像として表現した。
◎2030年のある日の姿 バックキャストで見る産業のあり方
GE薬協の次世代産業ビジョン「国民の医療を守る社会保障制度の持続性に貢献する~Society5.0 for SDGsの実現と共に~」では、 “2030年のある日の夕子さん”の姿を描いた。2025年に地域包括ケアシステム、30年にSociety5.0とSDGs(国連の定めた持続可能な開発目標)、40年の人生100年時代をキーワードに据えた。国は労働生産世代の減少に直面する2040年をターゲットに、健康長寿社会の実現に向けた議論を進める。医療環境や革新的技術が医療だけでなく社会全体に変革を起こすなかで、現状からの予測ではなく、未来からバックキャストして現状の課題などを浮き彫りにし、施策を講じている。
◎GE薬協・田中実務委員長「ポスト80%時代をどう乗り切るか」の視点
GE薬協は、未来投資戦略や骨太方針、保健医療2035など、国の施策を紐解くことでジェネリック産業として描くべき姿と決意を示した。日本ジェネリック製薬協会政策委員会の田中俊幸実務委員長は、今後の予測の不透明性も増すなかで、「ポスト80%をどう乗り切っていくかは考えないといけない。自分たちのことは自分で考えないといけない時代に入った」と決意を語った。
後発品ビジネスを取り巻く環境はこれまでも、そしてこれからも激変の波が襲う。これが緩むことは無いと予測する。25年度の製造錠数は900億錠まで伸びるが、その需要と裏腹に今後の政策如何によって頭打ちになる可能性も想定しておくべき課題でもある。2018年度薬価制度抜本改革では、長期収載品を後発品の薬価並みに引き下げる“G1・G2”ルールも導入された。政策委員会の山崎純副実務委員長は、「ジェネリック医薬品に限らず、基礎的医薬品や将来的には長期収載品とジェネリック医薬品の垣根はなくなる」と述べ、今後は特許期間中と、その後の2つの市場となるとの見通しを示した。協会としても、協会の名称変更も視野に新たな呼称の検討を進める。
◎社会インフラとしての貢献 患者の利便性や満足度向上を主眼とする産業像
次世代産業ビジョンでは、「健康長寿社会を実現する“健康・医療・介護の未来に貢献します。”特許期間満了医薬品“供給の社会インフラとして世界に貢献します」を社会との約束として明記した。
これまでに培った苦みのマスキングや口腔内崩壊錠に代表される製剤技術や生産技術を強みに、医療分野を超えた介護・未病分野への活用も盛り込んだ。患者のQOL向上だけでなく、医療・介護従事者の生産性向上に寄与することも視野に入れる。そのため、医薬品などの保健医療分野を超えたソリューションの開発に取り組む。個別化医療実現に向けたビジネスモデルの変革に取り組むことも明記した。そのためにICTをはじめとした異業種とのオープンイノベーションを推進し、患者の利便性や満足度向上に寄与する考えだ。地域医療の変化として「地域フォーミュラリの浸透に対応できる供給体制」などの対応にも言及した。このほかアジアをはじめとしたグローバルマーケットへの展開を果敢に進め、社会にバリューを提供するSDGsの達成に寄与する企業の姿を描いた。
◎ガバナンスのない企業は退場も
田中実務委員長は7月7日の学会シンポジウムでも次世代ビジョンについて講演した。ビジョンで描いた製薬企業の姿を「夢物語ではない。ただ、やるためには足元が重要だ」と語った。安定供給や品質管理、品質・安全性情報の提供をジェネリックビジネスの足元に置いた。後発品の品質については、日本医師会をはじめとした医療従事者側の認知も進んできているとの見方を示したうえで、「我々が後発品の品質をアピールしないといけない。伝えていない我々側に大きな問題がある」と会場全体に呼びかけた。そのうえで、こうした企業活動を支えるのは、「ガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメント」といった企業の基本理念だと指摘。「ガバナンスができていない会社は退場になる。できている前提の上で安定供給を行い、品質、情報提供する会社が将来のビジョンに対して取り組む権威を得るという時代になっていく」と述べた。
ビジョンは、①国民の「健康・医療・介護」において存在感を発揮、②(国際的プレゼンスの向上により世界の医薬品市場をリードする)グローバル化/ボーダレス化への果敢な挑戦、③地域包括ケアシステムの実現に貢献、④(Society5.0の到来に向け)ICTを活用した次世代ヘルスケア・システム構築への参画、⑤SDGsの達成に寄与―の五本柱を掲げる。揺るぎない安定供給体制、高度な品質管理体制、品質・安全性情報の提供の必要性も明記。企業ガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントは“企業活動を支える基本理念としている。GE薬協は次世代産業ビジョンを9月末に公開し、その後政策提言をまとめる考え。