中医協 次期改定の検討項目「フォーミュラリー」で議論開始 「地域」波及が焦点に
公開日時 2019/06/26 03:52
中医協総会はきょう6月26日、次期診療報酬改定の検討項目となった「フォーミュラリー」をテーマに議論する。厚労省はフォーミュラリーの事例として、浜松医科大医学部付属病院、聖マリアンナ医科大病院の院内フォーミュラリー、国内初の地域フォーミュラリーを運用する地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネット(山形県酒田市)のそれぞれについて資料を提出する。議論は「地域」フォーミュラリーにフォーカスされる見通し。地域フォーミュラリーの代表格である日本海ヘルスケアネットは、すでに推奨薬剤リストを作成、運用しており、導入後半年でPPIの処方状況が大きく変わるなど、すでに効果も出始めている。
これまでフォーミュラリーは、聖マリアンナ医科大病院に代表されるような経済性に重点を置き、院内での採用品目の絞り込みや薬剤費抑制などが着目されてきた。しかし、院内における推奨薬剤リストの作成などでノウハウを蓄積したのの、地域の病院や診療所、保険薬局との連携にまでは至っていない。厚労省としては、院内で運用されていたフォーミュラリーを地域に拡大することで、地域の経済的なインパクトを増大させるだけでなく、重複投薬やポリファーマシーの解消、薬薬連携の充実など多くのメリットが見込めると期待している。
◎日本海ヘルスケアネットの「運営体制」が参考に
一方で、地域フォーミュラリーの作成に当たっては、ステークホルダーが多く、作成・運用には難しさもはらむ。きょうの中医協総会に厚労省は日本海ヘルスケアネットの「運営体制」に関する資料を提示。病院機構、医師会、薬剤師会等 が連携し、病院、診療所が活用する地域全体のフォーミュラリーの作成を進めてきた経緯なども紹介する予定。また、2018年11月の地域フォーミュラリー導入から現在までの実績についても資料を示すことにしている。
◎推奨薬剤リストにPPI 導入効果に関するデータ提示へ
特に実績面で注目されるのは、プロトンポンプ阻害薬(PPI)等の薬効群で地域における推奨薬剤リストが作成され、昨年11月を境に日本海総合病院において一定の導入効果が出ていること。11月段階で最も処方(錠数換算)の多かったネキシウムから、推奨薬剤リストに入ったランソプラゾールに置き換わる月次別データも中医協に初めて示される予定。
◎リスト作成の「評価基準」も開示
さらに推奨薬剤リストの作成にあたって策定された「後発品の評価基準」についても報告される。実際のリスト作成にあたっては、事前に設定した評価基準に基づきスコア化し、有効性・安全性、経済性、合理性を総合的に検討した。具体的には生物学的同等性や、原薬の供給国、1包化の安定性、薬価、錠剤印字、適応相違、薬剤ごとに評価すべき項目―など。いずれもスコア化し、総合的に評価する。
日本海ヘルスケアネットは「地域フォーミュラリー」の影響について、薬剤が精選され漫然投与や薬剤の成分重複、併用禁忌・注意の回避などポリファーマシーが削減されたと強調している。また医療機関への影響については、基幹病院が地域フォーミュラリー参加することにより、「紹介・逆紹介」を経て薬剤の使用品目が収束し、患者の管理が行いやすくなるとした。さらに保険薬局への影響と可能性として、病院薬剤師と薬局薬剤師の連携や、多品種少量在庫が見直され、薬剤購入の計画性が図られ在庫管理がスムーズになるなどのメリットも強調している。
Monthlyミクス5月号では、日本海ヘルスケアネットの取り組みなど、地域フォーミュラリ―を特集しています(記事はこちら)。