医師の1割が“リモートMR”を利用 CNS領域やリウマチで利用率高く MCI調べ
公開日時 2019/06/19 03:52
医療従事者が製薬企業の社員とWeb画面などを通して1対1で双方向に対話し、医師が情報入手できるサービス「リモートMR」を利用した経験のある医師は約10%にとどまることが、市場調査会社エム・シー・アイ(MCI)の調べでわかった。この3年間、利用率に大きな変化はなかった。ただ、医師の専門別に見ると利用状況に差があり、特に統合失調症、うつ、リウマチ、COPDを専門とする医師で利用率は高かった。より専門性の高い情報が求められたり、画像共有した方が説明がわかりやすくなる疾患で利用が広がる可能性もありそうだ。
このサービスは「リモートコミュニケーション」や「リモートディテール」とも呼ばれる(以下、「リモートMR」と呼称)。多くのケースで医療者からの事前予約を受け付け、本社社員が対応する形で行われる。
調査は、製薬企業サイトや医療関係企業サイトを閲覧している医師を対象に実施した。有効回答数は5009人。調査期間は4月2日~17日。MCIはこの大規模医師調査を半年に1回実施しており、「医師版マルチメディア白書」としてまとめている。今回の調査結果は最新の2019年夏号に掲載している。
直近1年間にリモートMRを利用した経験のある医師は10.1%だった。同様の調査は17年から行っており、17年4月調査では9.9%、18年4月調査では11.2%――と、この3年間に大きな変化はない。事前予約への抵抗感や、リモートMR自体が十分に知られていないことが要因と思われる。
ただ、今回の調査で、医師の専門別にリモートMRの利用状況を見てみると、統合失調症を専門とする医師120人の20.8%が利用していた。これは専門別でトップの利用率となる。2位はリウマチ(医師数104人、利用経験20.2%)、3位はうつ(同150人、19.3%)、4位はCOPD(同59人、16.9%)、5位は糖尿病(同294人、13.9%)――と続いた。
■リモート利用医師の18.5% MR活用「増えた」
リモートMRが定着するとMRの仕事がなくなるとの懸念から、リモートMRの認知や利用向上のためのMRとの協業がうまくいかないとの声も聞かれる。これもリモートMRの利用率が上がらない理由のひとつだろう。
しかし、リモートMRの利用の有無別に、医師のMR活用度を見てみると、リモート利用経験医師でMRの活用度が「以前より増えた」との医師が多いこともわかった。リモート経験医師504人のMR活用度は、「以前より増えた」が18.5%、「以前より減った」が27.0%、「以前と変わらない」が54.6%――。回答医師全体(5009人)では同7.3%、37.0%、55.7%――で、MRの活用が「増えた」は、リモート経験医師で10ポイント強高かった。
医師自ら情報を取りにいく意欲の差が、リモートMRの利用につながり、実地のMRとの面会機会の増加につながったとも考えられるが、実地のMRにとってリモートMRとの協業は悪いことばかりではなさそうだ。
なお、リモートMRの利用経験医師を含む医師全体に、今後リモートMRを利用してみたいかを聞いたところ、13.6%が利用意向を示した。
■日本イーライリリーのリモート 「最も有益」との評価多く
リモートMRの利用経験医師に「最も有益」だったリモートの提供企業1社を挙げてもらったところ、トップは日本イーライリリーとなった。利用経験医師504人の20.4%がリリーを挙げた。2位以下はグラクソ・スミスクライン(12.5%)、ファイザー(8.5%)、武田薬品(6.2%)――の順。直近1年以内に3回以上、リモートMRを利用した医師75人に聞いても、「最も有益」な企業のトップはリリー(28%)で、2位以下を引き離した。
なぜリリーを挙げたのかをみてみると、「事前に自身の状況を把握した上でWeb面談に臨んでくれたから」が38.8%と最も多く、次いで「Web面談ツールを用いた説明が、よくトレーニングされていて解りやすかったから」(36.9%)、「対象製品に関する理解が深く、Web面談内での質疑応答に満足したから」(29.1%)――となった。事前準備の良さが評価を上げたようだ。