薬価研・上出委員長 類似薬効比較方式で比較薬の拡大求める 原価計算方式に限界も
公開日時 2019/06/17 03:52
日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会(薬価研)の上出厚志委員長(アステラス製薬上席執行役員)は6月14日、東京都内で会見し、類似薬効比較方式について、「比較薬(類似薬)の選定の仕方を変えられないか、次期薬価制度改革の中で議論していきたい」と述べ、比較薬の範囲拡大を主張する考えを示した。抗がん剤など革新的新薬の薬価算定に際し、原価計算での高額が相次ぎ、かつ製品総原価に対する開示度が低いことが中医協で議論となった。こうしたなかで、「原価計算方式には限界がある」と上出委員長は述べ、類似薬効比較方式を軸とした新たな薬価制度とすることで、製薬業界として一つの答えを出していきたい考えだ。
◎革新的新薬のモダリティー多様化への薬価対応は課題
現行の類似薬効比較方式では、効能・効果、薬理作用、組成および化学構造、投与形態(剤型、用法)に基づき、最類似薬の妥当性が検討されている。ただ、最近上市される革新的新薬は、再生・細胞医療など、モダリティーも多様化してきている。さらにがん領域では遺伝子変異に応じた臓器横断型の承認など、変化し始めている。
上出委員長は、現行の要件について、「適正に類似薬を評価し得ないケースも出てきているのではないか」と指摘した。製薬業界では、10年ほど前から、類似治療比較方式と呼ばれる、医療コストも含めて比較する新たな薬価算定方式について議論を重ねており、18年度薬価制度抜本改革に際しても議論の俎上にあがっていた。
原価計算方式では、海外からの移転価格などの妥当性が議論となり、
中医協の場ではブラックボックスなどとも指摘されてきた。19年4月に本格導入された費用対効果評価でも、原価計算方式で原価開示度が50%未満の製品は対象となっている。上出委員長は、「原価から積み上げる薬価算定が医薬品の価値と一致していない」と指摘した。一方で、原薬を購入している場合の原価などで、「開示には限界がある」と強調した。
◎新薬創出等加算「品目要件の拡充、企業要件の見直し」求める
次期薬価制度改革をめぐる議論は、5月29日に開かれた中医協薬価専門部会を皮切りにスタートしている。新薬創出等加算も議論の俎上にあがるが、現在のところ18年度薬価制度抜本改革で新たに導入された企業要件・指標のみだ。上出委員長は改めて、「薬価制度抜本改革で対象品目が絞り込まれるとともに、薬価が維持されないという仕組みになったと認識している。真に革新的新薬創出する仕組みにすべく、品目要件の拡充、企業要件の見直しを」と訴えた。
新薬創出等加算が試行的導入されたコンセプトは、特許期間中に薬価引下げを一時的に猶予されることで前倒しして得られる収益を研究開発費に充てることによる革新的新薬創出の加速と、未承認・適応外薬やドラッグ・ラグ解消の2つ。上出委員長は改めて、「このコンセプトはいまも変わっていないはずだ」との考えを表明した。そのうえで、16年12月に4大臣合意された薬価制度抜本改革に向けた基本方針に、「真に有効な医薬品を適切に見極めてイノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図る」と明記されていることを引き合いに、「今回の改定が本当にコンセプトに沿った改定だったかということを我々は疑問に思っている」と指摘した。
具体的には、品目要件については、薬価収載時の評価のみであることを指摘。市販後の効能追加などで有用性系加算の要件を満たす場合に改定時に加算対象とすることや、効能追加した適応症についても新規作用機序医薬品の革新性・有効性を判断する対象とすることなどを求めた。
企業要件・指標については一貫して撤廃を求めてきた。企業指標には国内での試験数や新薬収載実績などがあり、「企業の規模で有利、不利が出てくる」と上出委員長。さらには、他社との比較で企業区分が決まることから予見可能性にも影響を及ぼしているとの見方を示した。
このほか、基礎的医薬品の対象品目拡充などにも注力する姿勢を示した。18年度薬価制度抜本改革で盛り込まれた長期収載品を後発品の薬価にまで段階的に引き下げる“G1・G2ルール”については、「市場実勢価格を基本とする薬価改定の考え方からは大きくかけ離れた仕組み」と反発。後発品の使用促進への影響や基礎的医薬品との薬価を下支えするルールとあわせた検討を求めた。