中医協総会 エビデンス不十分な先進的医療技術 収載後にレジストリ登録を要件化
公開日時 2019/06/13 03:51
中医協は6月12日の総会で、保険収載時にエビデンスが必ずしも十分ではないと判断された先進的な医療技術について、保険収載後にデータやエビデンスを集積する観点から、レジストリへの登録を算定要件とすることを了承した。承認審査の段階で、一定の有効性・安全性を確認する一方で、製造販売後にリアルワールドデータ(RWD)を用いて有効性・安全性を確認する。研究開発費の高騰が指摘されるなかで、低コストで安全性や医療の質を担保したうえで、革新的技術を迅速に臨床現場に届ける考え。
国内では学会による疾患登録レジストリや、がんや脳神経外科入院患者などを対象にクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の整備が進んでいる。医療情報・収集解析を行う「MID-NET」の整備も進み、骨太方針2019にも「クリニカルイノベーションネットワークとMID-NETの連携」の環境整備が盛り込まれるなど、国をあげた取り組みが進められている。
すでに医療用医薬品は、「条件付き早期承認制度」が存在する。同制度では重篤で有効な治療方法が乏しい疾患に対する医薬品で、患者数が少ないなどの理由で検証的試験を実施することなどが困難だったものなどに対して認められる。症例数の限られた探索的臨床試験で、一定程度の安全性・有効性を確認したうえで、早期に承認。RWDの利活用などで製造販売後に有効性・安全性を確認することで正式承認する流れとなっている。正式承認までの間は、医師・施設要件などが定められた最適使用ガイドラインで運用し、適正使用も推進する。
2018年度診療報酬改定において、ロボット支援下内視鏡手術(ダヴィンチ)や性別適合手術の保険収載で、レジストリ(症例登録)への登録が算定要件とされた。性別適合手術は、あわせて専門医の配置など施設要件も明確にし、最適使用を推進している。医薬品だけでなく、RWDの利活用を革新的技術にも広げる考え。
◎実臨床データの活用で安全な技術確立を-診療側・松本委員
この日の中医協総会では、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「現在のように革新的技術が次々と開発される状況では、保険収載後の実臨床で得られたデータを活用してエビデンスを構築する取り組みは重要。特に、先進的な医療技術はレジストリへの登録を算定要件にするのはふさわしい」と述べた。さらに医薬品と同様最適使用推進を図ることで、安全な技術の確立が重要との見解も示した。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も、「レジストリへの登録を算定要件にすることは当然、必要」との見解を示した。
課題となるのが集積したデータを以下に中立的に評価するかだ。診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「登録するだけでなく、分析評価をしていく作業が必要になる」と指摘。費用対効果評価では当該製品の製薬・医療機器企業の結果を第三者(公的分析機関)が検証していることを引き合いに、データを中立的に検証する制度の重要性も強調した。