アポロメディカルHD 薬歴改ざんで調剤報酬不正請求 アルフレッサHD子会社
公開日時 2019/06/10 03:50
アルフレッサホールディングス(HD)は6月7日、連結子会社のアポロメディカルホールディングスが運営する北海道の薬局1店舗が、調剤報酬請求に関し不正行為をしていたとの社内調査結果を発表した。不正を行ったのは北海道北広島市にある「アイランド薬局ほくしん店」。2018年6月に北海道厚生局から薬剤服用歴が未記載のまま薬剤服用歴指導管理料を請求しているとの指摘を受けた。過去5年分の自主点検・自主返還を指示された際、薬局側で試算した約660万円の返還金額を、薬歴1万5304件を改ざんして未記載の薬歴を減らし、約10万円に減額した。改ざん行為はアポロメディカル取締役の薬局事業本部長が、管理薬剤師に指示していたことも判明した。アルフレッサHDは、アポロメディカルの組織的関与が認められるとして社外の弁護士3人からなる第三者特別調査委員会を設置。3か月をめどに全容解明とともに連結子会社の171薬局の調査を進める。
アルフレッサHDの久保泰三社長(写真中央)は同日、記者会見に臨み「許されざる行為であり、大変遺憾」と述べ、第三者委の調査結果を踏まえ関係者の処分、再発防止策を講じる考えを示した。その上で「不適切な行為により、関係者の皆様には多大なご心配、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪した。不正を指示したとされるアポロメディカル取締役に対し本部長を解き、6月の定時株主総会では取締役に再任しないことにした。社内調査結果は、北海道厚生局、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室に報告しているという。
◎厚生局に不正件数を過少申告
同社の説明によると、不正のきっかけは、18年6月に北海道厚生局の個別指導を受けた際に、一部の薬剤服用歴指導管理料に不適切な請求があると指摘され、18年6月までの5年間の薬歴について自主点検・自主返還の指示を受けたこと。点検した結果、約660万円の返還が必要と試算し、管理薬剤師は、アポロメディカル取締役薬局事業本部長に報告。本部長は試算金額を当時の社長(故人)に説明した際に「何とかならないか」と言われたことを踏まえ、当該薬局の管理薬剤師に不正を指示したとしている。
それを受け管理薬剤師を含む薬剤師4人と、アポロメディカルの第一事業部次長、エリアマネジャーの計6人が、同年7月にかけて不正行為を行った。社内調査によると現時点では、処方せん受付件数の約2割にあたる1万5304件に改ざんが判明した。具体的には▽未記載となっていた薬歴データに過去の服薬指導時のメモなどを見ながら薬歴データを作成し、日付を過去のデータに改ざんした▽レセプトの提出期限を越えて記載していた薬歴データを、請求期限内の日付に改ざんした▽薬歴の日付や新たな情報を追加し、薬歴の内容も改ざんした――という不正が見つかった。
薬歴を改ざんした結果、未記載の薬歴を244件に減らした。そのまま北海道厚生局に申告した。660万円と試算した返還金額は約10万円に減らした。アルフレッサHDは、今後の調査で不正請求額が確定し次第、保険者、患者に返還する。
取締役が不正を指示した理由について久保社長は、「返還金額を少なくしたかったとの考えがあったと、本人は説明している」と述べた。管理薬剤師の不正理由については、薬歴管理ができていない不手際を少なく見せたかったのではないかと推測した。薬局の経営状況については、不正を働かなければならない状況にないとした。薬歴未記載の背景については、介護施設の管理などもあり、毎日の業務に追われているうちに、記載しない薬歴が増えていったのではないかとの見方を示した。同社は、他施設でも薬歴の未記載のまま調剤報酬を請求している可能性があるとした。
◎アルフレッサHD・久保社長 ガバナンスを反省 内部通報制度機能せず
久保社長は、今回の問題について「ガバナンスに問題があった。反省すべきところ」との認識を示した。薬局から問題があがり、本社が指導したり、アルフレッサHDが子会社に指導するといったところが欠けていたことを示唆した。また、内部通報制度があったが「通報されないまま、こうなったことは一番課題にしなければならない」と語った。管理薬剤師から何らかの意見具申が行われた形跡もなかったという。第三者特別調査委員会は約3か月かけ、事実関係やグループ薬局での類似事例、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点を含めて調査し、再発防止策を提言する。
◎NPhAがお詫び「法令遵守を旨とした企業活動を徹底」
日本保険薬局協会(NPhA)は同日、会員企業であるアポロメディカルの調剤報酬不正請求を受け、「国民の皆様ならびに関係者の皆様に謹んで深くお詫びを申し上げます」との南野利久会長のコメントを発表した。これまでにもNPhA会員企業に調剤報酬の不正請求があり、再発防止に取り組んできた。そのため、「保険薬局への信頼を揺るがす事態」と指摘。「会員企業一同、国民皆保険制度の一翼を担う企業としての社会的責任を再確認し、法令遵守を旨とした企業活動を行うよう徹底していく」とした。