日本ベーリンガーインゲルハイム（NBI）の青野吉晃社長は６月６日、東京都内で開いた2018年業績の記者会見で、18年に実施した早期退職者の募集により、ＭＲ数は現在850人体制であることを明らかにした。前年は1300人体制であったことから約450人の減員となる。主力製品が２型糖尿病に用いるSGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬と競合激しい市場にあることから「まだSOVも大切」と語ったものの、ＭＲの増員はせず、製品特性や顧客の情報ニーズに応じたＭＲとデジタルの最適融合で対応していく考えを示した。

同社はこれまで、早期退職者募集により社員が約450人減ったと説明していたが、そのほとんどがＭＲだったことになる。

ＭＲが大幅な減員となる中で、情報提供・収集活動の量と質をどのように保つのかも気になるところ。この点について青野社長は、「まだSOVも大切なところはあるが、これだけでは難しい。顧客の情報へのアクセス方法も変わってきており、（ＭＲとデジタルの）両面にらみで、製品や顧客の特性に合わせた一番いい組み合わせを考えていきたい」と話した。「今のところＭＲは850人でやっていく」とも述べた。

■糖尿病領域売上トップ企業が「当然、視野にある」

NBIの18年売上は薬価ベースで1893億円で、前年比18.4％減だった。17年６月に特許切れした降圧剤ミカルディスファミリーの後発品影響が減収の主因となる。ただ、SGLT2阻害薬ジャディアンス、DPP-4阻害薬トラゼンタ、ジャディアンスとトラゼンタの配合剤トラディアンス、特発性肺線維症（IPF）治療薬オフェブ、抗凝固薬プラザキサ、COPD治療用配合薬スピオルト、肺がん治療薬ジオトリフ――の７つの戦略品は堅調だとして、青野社長は「今後の明るい状況が見えてきた」と語った。

このうちジャディアンスの18年売上は171億円（前年比55％増）で、SGLT2阻害薬の中で売上１位。トラゼンタは売上388億円（4.5％減）ではあったが、トラディアンス、ランタスのバイオシミラー（BS）を含む計４剤による糖尿病領域の売上は18年に600億円を超えた。なお、４製品とも日本イーライリリーと共同販促しており、ランタスBSを除く３製品はNBIに売上がたつスキームだ。

青野社長は、「（糖尿病領域製品の）売上トレンドが良い。いずれ日本の糖尿尿薬市場の中で当社が一番になれる日が来るのではないか、そこを目指してやりたいと思っている」とし、糖尿病領域で売上トップ企業となることは「当然、視野にある」と話した。現在はDPP-4阻害薬ジャヌビアなどを手掛けるMSDが売上シェアでトップとみられる。

オフェブの18年売上は221億円（37％増）で、IPF治療薬の中で売上１位。スピオルトは今年に入ってから、LAMA/LABA配合剤市場で売上１位になったという。青野社長は、「マーケットシェアは顧客や患者さんからの評価であり、一番になったということは高く評価されているということ」と述べ、更なる成長に自信を見せた。

■苦戦のオンコロジー事業からの撤退　「一切考えていない」

NBIは14年に、ジオトリフの上市により、オンコロジー市場に参入した。同剤は17、18年と２年連続で売上100億円を超えた。ただ、同剤は発売当初、ピーク時で200億円以上の売上が期待されていたほか、競合品タグリッソが18年８月に非小細胞肺がん１次治療の適応追加をしたこともあり、ジオトリフの成長は鈍化しているとみられる。

オンコロジービジネスに参入して５年が経ち、手掛けている抗がん剤はジオトリフのみであり、苦戦も指摘されている。青野社長は「多少苦戦しているのは事実だが、少数精鋭で、当該市場の顧客からは一定の高い評価をいただいている。国立がん研究センターとの臨床開発推進を目指した包括的提携もあり、（グローバルの）90の革新的プロジェクトの中にはオンコロジーに対する新しいアプローチのものもある」と指摘し、「オンコロジー事業から撤退することは一切考えていない」と強調した。オンコロジー担当ＭＲは17年に約100人体制と説明していたが、“少数精鋭”との現在の人員数は非開示とした。