IQVIAは４月16日、平成時代の日本の医療用医薬品市場データを発表した。平成の30年間を前期（89年～98年）、中期（99年～08年）、後期（09年～18年）の10年区切りとし、薬効別に市場動向をみると、前期は「全身性抗菌薬」が市場を席巻。中期は降圧剤ARBをはじめとする「レニン‐アンジオテンシン系作用薬」や「脂質調整剤」といった生活習慣病薬が急成長した。後期は「抗腫瘍薬」が薬効別売上で首位にたち、革新的なC型肝炎薬を含む「全身性抗ウイルス薬」も一時代を築いた。

文末の関連ファイルに、平成時代の日本の医療用医薬品市場データの資料を掲載しました（４月17日のみ無料公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります）。

■元年から４兆8000億円拡大

平成の国内医療用薬市場は、92年に６兆円台に乗り、その後03年、07年、11年、15年と４年ごとに１兆円ずつ桁が拡大してきた。その結果、18年の医療用薬売上は10兆3374億円で、平成元年（1989年）から４兆8114億円増加、87％成長した。

平成の時代は、前年比でマイナス成長は７回あり、このうち96年～98年は３年連続のマイナス成長となった。96年は前年比2.0％減、97年も同2.0％減、98年は同7.0％減で、この30年間で98年のマイナス幅が最も大きかった。

セフェム系抗生物質の濫用による院内感染・耐性菌問題などを発端にして流通改善や薬価制度改革が行われ、92年に加重平均値一定価格幅方式が導入、一定価格幅（R幅）は15％からスタートした。薬価改定のたびにR幅は縮小し、96年は11％、97年は10％（長期収載品は８％）、そして98年は当時の橋本内閣の行財政改革もあって５％（同２％）にまで一気に圧縮した。97年は消費税率を３％から５％に引き上げることに伴い、市場実勢価格を踏まえた薬価改定も行われた年で、結果的に96～98年の３年連続薬価改定となった。

これらの結果、薬価改定率は薬剤費ベースで96年が▲6.8％、97年は実質的に▲4.4％（このほか消費税対応分としてプラス1.4％）、98年は▲9.7％となり、製薬業界は打撃を受けた。当時を知る業界関係者は「製薬業界として初めて伸び悩んだ時期」と語る。この見方はIQVIAの今回のデータから改めて確認できる。

08年～16年は対前年比でプラス成長となった。この９年連続成長は平成では最長となる。生活習慣病薬の急成長や、がんやリウマチに用いるバイオ製剤の台頭が主な理由だ。

17年からは２年連続で前年を下回ったが、これは15年～16年に登場した革新的なC型肝炎薬ハーボニーなどの登場でほとんどのC型肝炎患者が根治したため市場自体が縮小したこと、またハーボニーやオプジーボなど高額薬剤の薬価を引き下げる再算定ルールの導入が主因とみられる。

■全身性抗菌薬市場　89年9655億円、18年2000億円近くに

主要16薬効別の市場規模推移をみてみる。全身性抗菌薬は平成前期（89年～98年）と中期（99年～08年）は売上ランキングでトップ。耐性菌対策を背景とする適正使用の推進と流通改善により、後期（09年～18年）は７位に後退した。市場規模は89年の9655億円から右肩下がりに推移し、18年は2194億円まで縮小した。

ARBを含むレニン‐アンジオテンシン系（RA系）作用薬の売上ランキングは前期８位、中期３位、後期２位――。各年の売上高の前年からの増減を足し引きした市場の「成長額ランキング」は前期５位、中期トップ、後期15位――で、中期に急成長したことがわかる。RA系作用薬市場は11年の6526億円がピークで、その後、後発品の市場浸透もあり、18年は3511億円となった。

抗腫瘍薬は売上ランキングで前期３位、中期６位、後期は首位となった。成長額ランキングも前期３位、中期２位、後期トップ――で成長基調にある。市場規模は98年の1603億円を底に毎年１ケタ台後半から２ケタ成長し、18年には１兆2001億円まで拡大した。

糖尿病治療薬は売上ランキングで前期９位、中期８位、後期３位――、成長額ランキングは前期４位、中期と後期は各３位――と堅調に推移している。市場は17年の5504億円がピークで、18年は5493億円と若干縮小した。