名古屋大・祖父江特任教授 CIDP治療薬ハイゼントラ皮下注「治療を変えるドライブに」
公開日時 2019/04/11 03:50
名古屋大学大学院医学系研究科の祖父江元特任教授は4月10日、CSLベーリング主催のメディアセミナーで、ハイゼントラの皮下注製剤が慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)治療の適応拡大を取得したことで、「治療体系をドラマティックに変える大きなドライブになる」と述べた。特に働く世代が医療機関にかかる時間を短縮できる意義を強調した。また、皮下注射であるため、静脈投与と比べ時間をかけて吸収されると説明し、「血中レベルが安定している」と述べた。
「ハイゼントラ20%皮下注」(一般名:pH4処理酸性人免疫グロブリン)は、「無又は低ガンマグロブリン血症」の適応を2013年9月に取得。19年3月に「CIDPの運動機能低下の進行抑制(筋力低下が認められた場合)」の適応拡大を取得した。
◎再発を半分に抑制 日本人での症例蓄積は「今後共有」
同剤の国際共同臨床第3相試験では、IgG依存性が確認されたうえで、寛解状態が続いている172人の患者を対象に、24週間の再発または試験を中止した患者の割合を検討した。その結果、プラセボ群が63%だったのに対し、ハイゼントラの低用量(0.2g/kg/週)群では39%、高用量(0.4g/kg/週)群では33%となった。結果について祖父江特任教授は、「再発率を半分程度に抑えることができた」と意義を強調した。ただ、「臨床試験に参加した日本人患者の数は多くない。今後どういった患者に大きな効果があるのかデータを集めて共有していく必要がある」と注視する考えを示した。
一方、有害事象については、プラセボ群で37%、低用量群で58%、高用量群で52%に発現したというが、「局所の反応が多く、全身性の有害事象は非常に少なかった」と振り返った。
◎CIDPグループ・鵜飼理事長 「健常者と同様の生活」に期待
患者の1人で、全国CIDPサポートグループの鵜飼真実理事長は、「(自宅で)1週間に一度皮下注することで治療ができれば、健常者と同じように生活ができるかもしれない」と期待を寄せた。また同社のロバート・チャンメディカルアフェアーズ本部長は、「MRに対しては、資材の作成や研修を通じて、患者が自ら注射ができるよう医療従事者に対して情報提供を行っていく」と述べた。