ノバルティス 神戸医療産業都市推進機構にCAR-T細胞製造の技術移転、治験用を製造
公開日時 2019/01/30 03:50
ノバルティスファーマは1月29日、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)医療である「CTL019」(国際一般名:tisagenlecleucel、海外製品名:キムリア)の治験用製品の製造に関して、神戸医療産業都市推進機構(FBRI、本庶佑理事長)への技術移転が完了したと発表した。FBRIの細胞療法研究開発センターに技術移転した。なお、日本で申請中のCTL019が承認された場合の製造は、米国ニュージャージー州の施設が担う。
今回の治験用製品の製造を通じて、FBRIのセンターがノバルティスのCAR-T細胞医療のグローバル製造戦略拠点となり得るかを評価・検討する。評価基準やスケジュールは非開示。FBRIのセンターがグローバル製造戦略拠点と位置付けられても、「治験用製品」の製造を担当する予定という。
同社のCAR-T細胞の製造拠点は、建設中を含め、米国ニュージャージー州の施設のほか、スイス、ドイツ、フランス、日本、中国にある。承認取得後の製造(商用製造)は米国の施設と、ドイツの施設の一部で行い、この2施設以外は治験用を製造する予定。グローバル製造戦略拠点を世界に何カ所整備するかは開示していない。
CTL019は日本で2018年4月に、▽小児を含む25歳以下のCD19陽性再発または難治性のB細胞性リンパ芽球性白血病▽成人のCD19陽性再発または難治性のびらん性大細胞型B細胞リンパ腫――の治療を対象に承認申請されている。
CAR-T細胞医療は、患者自身の細胞を用いてがんと闘う、高度に個別化された画期的な免疫細胞療法のこと。患者1人ひとりから採取されたT細胞は同社の製造施設で、がん細胞やその他の細胞の表面に発現するCD19抗原を特異的に認識し攻撃するよう、遺伝子導入により改変される。改変されたT細胞(CAR-T細胞)が患者の血液に投与されると、CD19を認識し攻撃する際に伝わる刺激により、CAR-T細胞自身が患者の血液内で増殖することから、治療は1回の投与のみで行われる。
CTL019は米国で17年8月、世界で初めて承認されたが、1回の治療で47万5000ドル(5000万円超)かかることでも話題となった。
現在までの日本を含む11か国の患者のCAR-T細胞は、米国の施設で製造してきた。高度な細胞製造技術と複雑な製造工程を厳格に管理する体制が必要となる。同社は世界規模でこの個別化された治療法を患者に届けるため、包括的な製造・供給チェーンの基盤を設計し、予想される需要に対応するとしている。
【訂正】下線部を訂正しました(19年1月31日16時)