5製品が新効能などを追加 キイトルーダにMSI-High固形がん適応、初のがん種横断型治療薬
公開日時 2018/12/25 03:52
医療用薬5製品が12月21日、新たな効能・効果や用法・用量を追加する承認を取得した。この中でMSDの抗PD-1抗体キイトルーダ点滴静注の適応に、特定のがん種を定めない「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん」が追加され、MSI-Highというバイオマーカーに基づいてがん種横断的に効能・効果を有する初めてのがん治療薬となった。また、中外製薬の抗PD-L1抗体テセントリクは、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対しファーストライン適応を取得した。同じく中外製薬の血友病A治療薬ヘムライブラは、インヒビターを保有しない患者にも使えるようになった。
追加承認を取得した製品は次のとおり(カッコ内は一般名、製造販売企業)。
▽キイトルーダ点滴静注20mg、同点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):追加内容は以下のとおり。
「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果に追加。
「悪性黒色腫」において、1回200mgの固定用量に改める新用量。
「悪性黒色腫」の効能・効果から「根治切除不能な」を削除し、術後補助療法の適応を追加。
「切除不能な進行・再発非小細胞肺がん」の効能・効果から「PD-L1陽性の」を削除し、PD-L1陽性にかかわらず使えるようした。
MSI-Highは遺伝子の修復機能の低下を示す遺伝子異常で、誤った遺伝子の配列を修復できなくなり、がんを引き起こす。MSI-Highの頻度は、米国のデータでは胃がんや子宮内膜がんでは患者の2割程度、全体では4%程度というデータがある。検出するコンパニオン診断薬はすでにファルコバイオシステムズが承認を取得し販売している。
MSI-High適応は条件付き早期承認制度の適用を受けた。条件としては、進行・再発のMSI-High固形がんを対象に実施中のフェーズ2試験の結果を終了後、速やかに医療現場に提供することや、MSI-High固形がんのうち、結腸・直腸がんを除く固形がんについては有効性データが少ないとして、製造販売後調査などを通じた使用患者の背景情報を十分な把握とともに、有効性・安全性データの早期収集などが求められた。
▽テセントリク点滴静注1200mg(アテゾリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「化学療法未治療の扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を用法・用量に追加。ファーストラインで使えるようにする。抗PD-L1抗体。
▽へムライブラ皮下注30mg、同皮下注60mg、同皮下注90mg、同皮下注105mg、同皮下注150mg(エミシズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):血液凝固第8因子に対するインヒビターを保有しない血液凝固第8因子欠乏患者にも使えるようにすることを、効能・効果に追加。1週間間隔投与に加え、2週間隔、4週間隔でも使えるようすることを用量・用量に追加。
▽コセンティクス皮下注150mgシリンジ、同皮下注150mgペン(セクキヌマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎」を効能・効果に追加。
この疾患ではIL-17Aが関連するサイトカイン経路が重要な役割を果たしているといわれ、同剤がIL-17Aの生物活性を中和することで、抗炎症効果を発揮するとされる。治療ではまずNSAIDsが使用され、効果不十分な場合などにおいてTNF阻害剤が使用され、コセンティクスはTNF以外のサイトカインを標的とした初の治療薬。
▽スーグラ錠25mg、同錠50mg(イプラグリフロジンL-プロリン、アステラス製薬):「1型糖尿病」を効能・効果に追加。インスリン製剤との併用し、50mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与する用法・用量を定めた。1型糖尿病の適応を持つ、SGLT2阻害薬は初めて。