政府の規制改革医療・介護WG PhRMAが患者への広告規制緩和を主張
公開日時 2018/12/21 03:52
米国研究製薬工業協会(PhRMA)は12月20日、政府の規制改革推進会議医療・介護ワーキンググループに、「患者が治療選択するための情報提供が制限されている。規制が時代に即さなくなっている」として、患者への医療用医薬品の広告規制を緩和すべきと主張した。“広告(宣伝)”と“適正な情報提供”の定義を明確にすることで、患者への情報提供ができるよう現行法の改正を求めた。一般人向けの医療用医薬品の情報提供については、医薬品医療機器等法(薬機法)67条や適正広告基準で禁止されている。ただ、行政側が事前に確認した情報をPMDAのホームページに掲載するほか、学会での個別企業の展示ブースで患者向けの情報提供を認めるなどの対策も取られている。
PhRMAは、「一部の製薬企業による不適切な情報発信に懸念の声が上がっており、適正な宣伝広告(プロモーション)活動を行う必要性が生まれていることは認識している」としながらも、“適正な情報提供”までもが制限されることへの懸念を表明した。さらに、「患者はもとより医療関係者にも必要な情報が届かなくなり、医療の質の低下が懸念される」との主張を展開した。
◎販売情報提供活動GLを牽制
その上で、「プロセスとルールを定めることで、患者の治療選択に必要な科学的エビデンスに基づいた適正な医薬情報の提供を可能にする」ことを求めた。特に、厚労省が2018年9月に公表した「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(以下、販売情報提供活動GL)」については、依然として“案”と記して反発。改めてGLがパブコメの段階で8月に公表したPhRMAの主張を提示し、「プロモーション活動の是正を促進することを重視するあまり、医薬品を適正に使用し、患者にとってより質の高い治療を提供することが阻害される懸念がある」と牽制した。
PhRMAは、「科学的エビデンスに基づく適正な情報提供はプロモーションではなく、医療関係者にも患者にも必要な情報である。日本が医療に関して海外に後れをとることなく、最善の医療の実現を図るためにも、時代に即した法改正が求められる」と主張した。このほか、マスメディアへの情報提供についても明確にし、適正な医薬情報の提供を阻害しないことを求めた。一方で、科学的エビデンスに基づかない情報については規制強化を実施することも求めた。
◎厚労省 判断難しい広告の監視指導 Webサイトまで範囲拡大
一方、厚労省は、日記やブログ、ランキングサイトなどでの “アフィリエイト広告(成果報酬型広告)”や疾患啓発など、広告該当性の判断が難しい手法が増加していることを広告の監視指導における課題にあげた。美容医療サービスなどで消費者トラブルが増加していることから、医療法上の広告規制の枠組みを折り込み広告やテレビCM、看板などから、ウエブサイトまで範囲を広げるなど、規制を強化している。
同省の「販売情報提供活動GL」については、未承認薬・適応外薬についての情報提供をめぐり、患者や患者団体も医療関係者と同様、求めがあり、科学的・客観的根拠があることなど8要件を満たすことで提供可能としている。ただ、情報提供との線引きが難しいことから現在、厚生労働科学特別研究班を立ち上げ、検討を進めている。
厚労省の「2017年度医療用医薬品の広告活動監視モニター事業」の中間報告では、2か月間で延べ23の医薬品についての疑義報告があり、違反が疑われる項目は延べ30件にのぼった。なお、一般向けの情報提供では、2017年に健康番組で放映されたMSDの睡眠薬の効果をめぐり、NHKが厳重注意を受けている。