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新改革工程表 Super MID-NET構想実現で臨床研究充実 大型長期品の薬価段階的引下げ期間短縮へ

公開日時 2018/12/11 03:53

政府は12月10日の経済財政諮問会議に「新経済・財政再生計画改革工程表2018」の原案を提示した。改革工程表には、臨床研究中核病院の医療情報を19年度中に利用可能とすることを明記。医療情報データベース(MID-NET)と、疾患レジストリーである“クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)”を融合する、いわゆる“Super MID-NET”構想の実現を目指す。RWDが利活用できる環境整備を着々と進め、研究開発を効率化するとともに革新的新薬創出を促す。一方で、高齢化に伴って増大する社会保障費を適正化するため、20年度の薬価制度改革でさらなるメスを入れる姿勢を鮮明にした。改革工程表には、20年度以降に大型製品の特許切れが想定されるなかで、長期収載品の段階的な価格引下げの期間短縮なども改革項目に入った。薬剤自己負担の引上げや保険収載における費用対効果や財政影響などの経済効果や保険外併用療養の活用など“給付と負担”の議論にも切り込む方針だ。

2019年度予算編成作業が大詰めを迎える中、財務省は社会保障費の自然増の伸びを5000億円に抑制するなど、これまで貫いてきた従来路線を堅持する姿勢を崩していない。政府として、22年度以降の高齢化のピークを見据え、あらゆる面から適正化に向けた施策を検討し、実行に移す考えだ。

安倍首相はこの日の諮問会議で、新たな改革工程表を「海図」と称した。19年10月の消費増税から半年後の20年4月には薬価・診療報酬改定が控える。改革工程表という羅針盤が指し示すメニュー項目をみると、医療ICTや人工知能(AI)の利活用など、新たな市場の広がりへの期待感を感じる部分があるものの、薬価制度をはじめ、給付と負担については抑制の方向が色濃く反映されていることが見て取れる。16年末の薬価制度抜本改革に関する4大臣合意では、「長期収載品依存モデルから脱却し、革新的新薬の創出を促進するための効率的・効果的な仕組みへと抜本的に見直す」とのメッセージが製薬産業側に突き付けられた。今回の新改革工程表もこの流れを停滞させることなく、着実に歩ませる方針を打ち出しており、製薬ビジネスの産業構造転換を促す姿勢に一点の曇りはないことが分かる。

◎RWD利活用で研究開発の生産性向上目指す

新改革工程表に明記されたメニュー項目を見てみたい。革新的新薬を生み出す研究開発費の高騰が企業経営にとって最大の課題となるなかで、産官学連携による支援策として「クリニカルイノベーションネットワークとMID-NETとの連携」が盛り込まれた。RWDを治験や臨床研究、医薬品開発、安全対策などに活用することで、研究開発の生産性を高めたい考え。具体的には、2019年度には、治験・臨床研究や医薬品開発、安全対策への活用に向けて臨床研究中核病院の医療情報を利用できる体制を構築。21年度には、臨床研究中核病院のデータを継続的に品質管理・標準化し、臨床研究に活用する姿を描いた。KPIとしては、19年度末までにMID-NETの経験を踏まえた医療情報の品質管理・標準化についての研修を4医療機関で実施。20年度末には、臨床研究中核病院で標準化された医療情報の研究利用を開始した医療機関を4施設とすることを明記した。

◎AI開発を加速 バイオ医薬品やバイオシミラーの研究開発の推進

また、①ゲノム医療、②画像診断支援、③診断・治療支援、④医薬品開発、⑤介護・認知症、⑥手術支援―を重点領域に据え、AI開発を加速。19年度中にAI開発に必要な医用画像データベースを構築に取り組み、20年度末までに全領域で構築することを掲げた。20年度末には、AI技術の製品化など、現場での実用化を見据える。認知症やがんゲノムについては「社会的課題」として予算の重点配分も明確化した。全国的な情報登録システム“オレンジレジストリ”に発症前段階も含めた登録件数を20年度までには合計1万件とし、バイオマーカーの確立、日本発の認知症の疾患修飾薬候補の治験開始などを盛り込んだ。

がんゲノムについては、19年度中にゲノム情報や臨床情報を集約・整備し、産官学連携による革新的新薬開発の推進を盛り込んだ。遺伝子パネル検査の実施施設数拡大も明記した。このほか、バイオ医薬品やバイオシミラーの研究開発の推進では、19年度中にバイオシミラーの医療費適正化効果額・金額シェアの公表などを盛り込んだ。KPIとしては、20年度末までに17年度7月時点から10品目へと倍増するとしている。

◎薬価制度改革の手は緩めず 大型長期収載品などさらなる改革メニューも


一方で、薬価制度改革については、さらなる改革を推し進める方向性も示されている。2020年度の薬価制度改革が控えるなかで、▽新薬創出等加算品目を比較薬として類似薬効比較方式で算出された品目についての新薬創出等加算の累積額控除についての検討、▽長期収載品の段階的な価格引下げ開始までの期間の在り方についての検討、▽イノベーションの評価に関し、効能効果等による革新性・有用性の評価の「是非」の検討―が盛り込まれた。長期収載品については、18年度薬価制度改革で長期収載品の薬価を段階的に引き下げるG1・G2ルールが新たに導入されたが、経済財政諮問会議の場などで、期間短縮を求める声があがっている。ただ、業界内からは、特許切れからZ2導入への期間短縮を危ぶむ声がすでにあがっている。

イノベーションをめぐっては、製薬業界が12月5日の業界陳述で医薬品の多面的価値をめぐる議論を求めており、この「是非」が次期薬価制度改革の焦点となりそうだ。また、「生活習慣病薬についての費用面を含めた適正な処方の在り方」を示すフォーミュラリや、高齢者への多剤投与対策なども盛り込まれている。

このほか、2020年度に見据える「給付と負担の見直し」の議論では、薬剤自己負担の引上げや、新規医薬品の保険収載に際しての費用対効果や財政影響などの経済性評価や、保険外併用療法の活用なども盛り込まれた。

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