規制改革推進会議・専門チーム会合 降圧薬・ミカトリオのレセプト記載簡素化が議題に
公開日時 2018/11/29 03:50
政府の規制改革推進会議の専門チーム会合が11月28日開かれ、降圧薬・ミカトリオ配合錠のレセプト記載の簡素化などが議題にあがった。ミカトリオは、国内初の3剤配合の降圧薬。用量が固定されるため、適正使用推進の観点から、投与対象を血圧値が安定した患者に絞ることが必要と判断され、切り替え時の状況を診療報酬明細書の摘要欄に記載することが留意事項通知で求められている。規制緩和を要望した日本高血圧協会の島本和明理事長(日本医療大学総長)は、「ミカトリオの保険適用にかかわる留意事項については撤廃し、添付文書に準拠した、医師の裁量権に任せた処方を可能にしていただきたい」と訴えた。
ミカトリオは、ARB・テルミサルタン、Ca拮抗薬・アムロジピン、利尿薬・ヒドロクロロチアジドの配合剤。血圧値は様々な要因で変動するが、用量が固定されると十分な調整が行えず、血圧が過剰に低下し、副作用発現のリスクとなることが懸念される。
同剤の承認に際し、厚労省は、薬事・食品衛生審議会(薬食審)での意見を踏まえ、日本循環器学会・日本高血圧学会の協力の下、「ミカトリオ配合錠の適正な使用についての指針」を策定。これに基づいて、留意事項通知を発出し、医師らに適正使用を促した。留意事項通知では、「原則として8週間以上、配合剤と同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合」に切り替えを容認した。切り替えに際しては、診療報酬明細書の摘要欄に併用していた品名・使用期間、血圧コントロールの状況や、安定した血圧コントロールだと判断した際の血圧測定値、血圧測定の実施年月日を記載することを求めている。
島本理事長は、NIPPON DATA80のデータを引き合いに、国内の血圧管理状況が半数にも達していないと指摘。降圧目標未達の患者では降圧治療を受けていても心血管疾患発症リスクが高く、結果として医療費増大につながっている可能性を示した。そのうえで、配合剤の活用は患者のアドヒアランス向上につながるとの考えを示し、治療上の意義を強調した。欧州でも、3剤の配合剤は第一選択では用いないことは明確にされているものの、保険上の規制はないことを引き合いに、規制緩和を訴えた。
これに対し、厚労省側は、国内で留意事項通知発出に至った背景に、薬食審で対象患者を明確にする必要性が指摘され、日本循環器学会・日本高血圧学会の協力の下で適正使用に関する指針を策定したと説明。内閣府規制改革推進室によると、学会の策定するガイドラインの改定がなされれば規制緩和を検討する可能性も示したという。また、従来は、診療情報の利活用を推進する観点から、配合剤を継続使用する際に診療報酬明細書の摘要欄に切り替えた診療年月日の記載を求めていたが、診療報酬にかかわる事務の効率化・合理化を進める観点から2018年度診療報酬改定でこの項目を削除。簡素化に取り組んでいる現状も報告し、こうした内容の周知をする必要性などにも議論が及んだ。
専門チーム会合は、規制改革推進会議にホットラインで寄せられた要望のうち、各ワーキングでの取り扱いが保留となった議題について検討するもの。各省庁へ要望を伝えたことで、「調査の実施や指針の見直しなどにつながるきっかけを作った」(内閣府規制改革推進室・福田明美参事官)としている。必要に応じて、医療・介護ワーキングでの議論につなげるケースもあるという。