ファイザー ドマグロズマブのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの試験中止 治療効果みられず
公開日時 2018/09/07 03:51
ファイザーは9月6日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の治療薬として開発中のドマグロズマブ(遺伝子組換え、開発コード:PF-06252616)について、有意な治療効果がみられなかったことから臨床試験の中止を決めたと発表した。この臨床試験には日本も参加していた。臨床試験から得られる知見の理解を深めるため、今後もデータを評価し、アカデミアやDMDに関わるコミュニティに結果を共有していくとしている。
試験を中止するのは、多施設共同第2相二重盲検プラセボ対照試験(B5161002)と非盲検延長試験(B5161004)の2件。B5161002試験では、6歳から15歳までのDMDの男児121人を対象にドマグロズマブを1か月に1回静脈内投与し、有効性と安全性を評価した。2年間のプラセボ対照試験(1年後に主要解析)として計画し、全ての被験者が基礎治療としてコルチコステロイドを使用した。
その結果、有効性の主要評価項目とした4段の階段上りに要する時間について、1年間のドマグロズマブ投与後におけるベースラインからの平均変化量をプラセボと比較したが、この主要評価項目が達成されなかったという。また、開発中止の決定は、1年間を超えて試験に参加している患者も対象に評価するなど「主要解析時に得られたデータを詳細に検討した後に下した」としている。
B5161004試験は、ドマグロズマブの長期的な安全性と有効性を評価することを目的として計画した。
ファイザーのシニア・ヴァイス・プレジデント兼希少疾病医薬品研究部門最高科学責任者のSeng Cheng氏は試験の中止を受けて、「今回の結果を大変残念に思う。試験は中止されるが、データはこの疾患の理解向上に役立つ」とし、「引き続き、データ全体を評価し、この薬剤が筋疾患に貢献できるかどうかを見極めていく」と話している。
DMDは、希少かつ重篤な小児の消耗性遺伝子疾患で、進行性の筋変性や筋力低下、重大な余命短縮をもたらすことが特徴。世界中で最も多く見られる筋ジストロフィーの病型で、主に男児に発症し、毎年、出生男児3500~5000人につき1人の割合で発症する。通常、DMDは1~4歳の小児期早期に発症し、筋力低下の症状が見られる。筋変性が進行すると、平均で10代前半に歩行能力が失われる。呼吸筋の筋力低下により、最終的には人工換気補助が必要になり、心筋低下のため心筋症につながる。