田辺三菱 基礎研究から市販後までAI導入へ AI導入見据え業務見直しも
公開日時 2018/08/21 03:52
田辺三菱製薬の三津家正之社長は8月20日、東京都内で行った記者懇談会で、基礎研究から市販後調査までの業務にAIを導入する検討を進めていることを明らかにした。新規化合物探索や既存化合物の新規薬効を短時間で発見することや、臨床試験の成功確率の向上、開発期間の短縮化、MRとデジタル活用による医薬品提供活動の最適化などを実現し、生産性の向上を目指す。併せてAI導入を見据え、コア業務の再検討と既存業務の要否の仕分けなど、業務内容の見直しを社員に指示していることも明かした。
三津家社長は、「昨年来、薬の値段と医療財政の継続性をどう両立させるかが課題になっている。AI、ITを利用し、創薬プロセスを抜本的に見直し、創薬と同様にコストがかかる営業・マーケティングにどう利用することができるか。いかに事業の運営コストを落とし、アフォーダブル(社会的に妥当)な価格で医薬品にアクセスを継続できるようにするかが課題だと認識している」と述べ、17年4月に新設した「フューチャーデザイン部」で検討してきたことを明らかにした。
同社長は以前から、研究開発費の高騰で薬価も高くすることは医療保険制度の持続性を損なうと指摘していた。今回、研究開発のみならず、市販後までのプロセス全体にAIを導入し、医薬品事業をより効率化、合理化することで、妥当な価格の薬剤を創出していく姿勢を示した。
併せて、AI導入を見据え、社員に業務を見直すよう指示していることも明らかにした。具体的には▽今後も継続しなければならないコア業務▽やめてよい業務▽アウトソーシングすることで変動費化し、質の良くなる業務▽デジタル技術に置き換えることで、さらに業務の質が上がる。または、これまでできなかったことが、できるようになる業務――に仕分けするように呼び掛けているという。
三津家社長は、「将来的な要員計画を練っているところだが、仕事の仕分けが最初である。仕分けを通じ、強化すべきところを見つけていく活動をしている」と説明した。
同社によると、AI導入を検討しているテーマは、「基礎研究領域」では▽フェノタイプスクリーニング(細胞画像を活用。タンパク質変化量を指標とし、それを変化させる化合物を探索する手法)▽ドラッグリポジショニング(薬剤の新規作用や適応症を予測)▽活性予測。「非臨床試験領域」では▽心毒性評価▽病理評価▽肝障害予測。「臨床試験領域」では▽臨床計画(効果的な治験デザイン)。「承認申請領域」では薬事申請。「販売領域」では▽服薬アドヒアランス(向上ツール等)▽デジタルマーケティング(医薬品情報提供活動の最適化:「ZEUS」プロジェクト)▽くすり相談。「市販後調査領域」では▽ファーマコビジランス業務。