次期薬機法改正 保険薬局の基本機能と機能を明記へ 地域住民にも機能見える化を
公開日時 2018/07/26 03:52
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会は7月25日、地域包括ケアシステムにおいて保険薬局に最低限必要な基本的機能と、抗がん剤やHIV治療薬など高度薬学管理や在宅医療などの機能を改正医薬品医療機器等法(薬機法)に明記する方向性を大筋で固めた。また保険薬局が地域に果たす機能が地域住民に十分周知されていないことが問題であるとして、地域住民に対して薬局機能の可視化を進める必要性も指摘された。高齢化、人口減少が進むなかで、2040年までの道筋として、保険薬局のあるべき姿について薬機法改正を通じて示す考え。
厚労省はこの日の制度部会に、薬局における主な業務として、▽処方箋の応需・薬剤の交付、▽高度薬学管理機能(抗がん剤・抗HIV薬)、▽夜間・休日対応、▽在宅応対、▽要指導医薬品、一般用医薬品の販売、▽健康サポート機能、▽その他(学校薬剤師、スポーツファーマシスト、災害対応)-をあげた。一方で、薬局の店舗数や立地、個室の有無など設備面、薬剤師数などには差があり、すべての薬局でこれらの機能を満たすことは難しい。
実際、現在保険薬局が果たしている機能にも差があり、門前薬局で処方箋枚数を獲得して調剤に注力する薬局から、在宅医療に注力する薬局、医療機関と連携し抗がん剤の投与なども行う高度薬学管理に注力する薬局など様々。一律に“薬局”という言葉で括るのが難しい状況にある。規制改革推進会議などで、「患者が医薬分業の利益を実感できていない」との指摘もあったが、こうした背景に地域住民にとって薬局の機能を把握できないことがある。
◎花井委員「医薬分業のミニマムとは何か?」
この日の議論では、薬局の規模や施設整備の状況などが異なる中で、最低限求められる薬局の機能を明確化し、地域の中で薬局の果たす機能を地域住民に見える化することの必要性を指摘する声があがった。花井十伍委員(特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権理事)は、「医薬分業のミニマム(最低限)とは何なのか。色々なスタイルがあってもいいが、最低限のところは記述されるべきだ。そのうえで、高度な機能を薬機法上で位置づければよい」と述べた。
伊藤由希子委員(津田塾大学総合政策学部教授)は、「同じように見える街の薬局が高度な機能を持っている、高度な薬剤を扱える、高度な薬剤師がいる薬局について三つ星や四つ星でランク化され、機能分化が我々にもわかりやすい形で示されるのは全く悪いことではない」と述べた。
これに対し、乾英夫委員(日本薬剤師会副会長)も、「高度薬学管理を含め、薬局が担う機能は様々ある。施設の規模の違いなどもあって、個々の薬局がすべての機能を揃えるのは現実的ではないと言わざるを得ない」と述べた。一方で、”地域”全体で住民のニーズに応えることの必要性を強調。日本薬剤師会は、過疎地域や中山間地域を含めて医薬品供給を確実に行えるよう、「医薬品供給体制確保計画」(仮称)の策定を求めているが、「地域の薬局間で必要な機能を分担し連携を図ることで、地域住民に対し薬局が適切な機能を果たせるのではないか。地域における個々の薬局の担う機能を把握することが必要。足りない部分をしっかりと補うことが必要だ」と述べた。医療機関では病院機能報告制度があるが、保険薬局でもこうした制度を参考にする考えも示した。
◎保険薬局の規模も議論に
薬局機能をいかに位置付けるかは今後の焦点となりそうだ。山口育子委員(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、薬局の規模や施設に大きな差がみられることなどから、「同じ薬局という言葉で語れない分類がある」と指摘。医療機関は病院と診療所に区分されているが、保険薬局でも規模により果たすべき役割が異なるとの見方を示し、分類の必要性を指摘した。このほか、伊藤委員は、「すべての薬局が健康サポート薬局を目指すことにメリットがあるような評価や機能の立て付けが法律でできるのではないか」と述べた。
◎ガバナンス強化 必要性認める声あがる
薬局開設者と管理者の責務などを明確化等を通じたガバナンス強化については、必要性を認める声があがった(関連記事)。三村優美子委員(青山学院大学経営学部教授)は、「薬剤師、薬局の機能というより、企業経営のあり方そのものに問題がある」と指摘。ガバナンス、マネジメントのあり方、企業としての社会的責任などについて、「政府としてもしっかりとした政策があってしかるべき」との考えを示した。乾委員も、「一部の組織の問題として片づけるのではなく薬局全体の問題として早急な措置が必要ではないか」と述べた。
今回で議論は一巡し、次回以降厚労省側の示す論点整理をもとに議論が進められる見通し。