独BI デジタルツール注力で希少疾患の早期診断を ミカルディス特許切れで国内売上高は二桁減収
公開日時 2018/04/26 03:52
独・ベーリンガーインゲルハイムのフベルトゥス・フォン・バウムバッハ会長は4月25日、ドイツ・インゲルハイムの本社で決算会見に臨み、デジタルヘルスに注力する方針を示した。具体例として、クラウドを通じ、携帯電話を活用して肺音を医師に伝えるいわば“スマート聴診器”などをあげた。特発性肺線維症(IPF)など希少疾患の早期診断・治療につなげることで、医師や患者に貢献したい考え。同日発表した2017年グローバル業績は、サノフィと事業交換した動物用医薬品事業が好調で、13.9%増(ユーロベース)の181億ユーロに伸長した。国内の医療用医薬品事業の売上高は14億1500万ユーロ(約1792億2400万円)と、ARB・ミカルディスの特許切れが響き、18.7%減。薬価ベース(IQVIAデータ、日本円)では10.3%減となった。(4月25日 ドイツ・インゲルハイム発 望月英梨)
同社がデジタルソリューションの活用を掲げたIPFは、確定診断に至るまでに他疾患の除外が必要で、的確な診断が難しいことが知られている。早期診断・治療に結び付けることが課題とされている疾患でもある。ミヒャエル・シュメルマー財務担当取締役は会見で、スマート聴診器の活用と人工知能(AI)による画像診断の支援に取り組む考えを明らかにした。なお、同社はIPF治療薬のオフェブを販売している。
会見では、デジタルソリューションの開発だけでなく、多方面に投資していることも紹介された。2017年には、ヘルスケア領域でのデジタルツールに注力するラボ「BI X」を設立。マーケティングやITだけでなく、デジタルの引き起こすイノベーションについての可能性を検討してきた。BI Xの社員を17年末の30名から18年半ばには50人まで増員し、今後さらに注力する方針を示した。さらに、ホームページ「opnMe」を通じ、20化合物のライブラリーを共有するなどの取り組みを進めていることも紹介した。
また、脳梗塞発症後の治療に注力していることも紹介。急性期治療を集中的に行うストロークセンターを2019年5月までに欧州だけで1500施設の開設を計画するほか、20年までにリハビリ施設を中国、ポルトガルに設立を計画。グローバル全体で脳卒中の治療成績向上に企業として貢献する姿勢を強調した。
◎ヒルグローブ医薬品事業担当取締役「日本は今後も重要な国」
2017年のグローバル業績は、医療用医薬品事業の売上高が5.0%増の126億2100万ユーロに伸長した。グループ全体の70%に当たる。Spiriva(日本製品名:スピリーバ)が売上高トップの28億ユーロで、特許切れ後にもかかわらず、3.9%の減にとどまった。さらに2型糖尿病治療薬・Jardiance(ジャディアンス)が10.1億ユーロ(135.7%増)、トラゼンタファミリーであるTrajenta/Jentaduetoが13億ユーロ(20.5%増)、IPF治療薬のOFEV(オフェブ)が9.2億ユーロ(52.3%増)。これにミカルディスファミリーを加えた、6製品群がブロックバスターとなり、売上を牽引した。
国内売上高もジャディアンスやトラゼンタ、オフェブなどが牽引したが、ミカルディスの特許切れが響いた。同日、インタビューに応じたアラン ヒルグローブ医薬品事業担当取締役は、中国市場のさらなる伸長を見通した上で、改めて日本が世界第二の市場であると説明。「日本は米国と並び、これまでも、そしてこれからも重要な国だ」と強調した。
◎開発品65%にファーストインクラス・ブレークスルーの可能性
このほか、研究開発については、グローバルで臨床・前臨床段階に80プロジェクトがあり、このうちファーストインクラスやブレークスルーセラピーとなる可能性のある医薬品が65%を占めることも報告された。