NPhA・南野会長 18年度調剤報酬改定「厳しいを超越した内容」 地域支援体制加算に衝撃走る
公開日時 2018/02/09 03:52
日本保険薬局協会(NPhA)の南野利久会長(メディカル一光)は2月8日、定例会見に臨み、答申された2018年度調剤報酬改定について、「厳しいとか厳しくないとかを超越した内容だった」と衝撃を語った。18年度調剤報酬改定では、現行の基準調剤加算が廃止され、地域への貢献について実績要件を設けた地域支援体制加算が新設される。南野会長は、実績要件である8項目のクリアが難しいとして、「努力して取れるものではない」との見方を表明。「薬局として使命を果たさなければいけない」としながらも、「過去にこのようなことはなかったと思う」と述べ、NPhA会員企業の薬局経営への打撃に懸念をにじませた。
2018年度予算編成の過程では、C型肝炎治療薬・ハーボニーの偽造品問題、付け替え請求問題などもあり、調剤への風当たりが強くなった。特に、医療経済実態調査の結果で経営が良好であることが明るみになったチェーン薬局が矢面に立った。調剤報酬全体はプラス0.19%で決着したが、外枠で「大型門前薬局の適正化」として国費ベースで約60億円が引き下げられた。
調剤基本料も、処方箋回数が月4万回超のグループについての減算措置を、処方箋集中率を95%から85%へと拡大。特定の医療機関との賃貸借関係がある場合を加え、20点とした。さらに、グループ全体で月40万回超については、さらに点数を引下げ15点とした。しかし、これ以上にチェーン薬局の経営者の間で衝撃が走ったのが、現行の基準調剤加算を廃止し、新設される「地域支援体制加算」だ。
地域支援体制加算は、地域包括ケアシステムの中で地域医療に貢献する保険薬局について評価する点数(35点)。施設基準の中には、一定以上の時間の開局や医薬品の備蓄、24時間調剤、在宅対応体制の整備など11項目を要件とした。要件として、「地域医療に貢献する体制を有することの実績」を求めたのが特徴。実績要件は、1年間に常勤の薬剤師1人当たり、①夜間・休日等の対応実績400回、②重複投薬・相互作用防止加算等の実績40回、③服用薬剤調整支援料の実績1回、④単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績12回、⑤服薬情報提供料の実績60回、⑥麻薬指導管理加算の実績10回、⑦かかりつけ薬剤師指導料の実績40回、⑧外来服薬支援料の実績12回―のすべてを満たすこととした。
南野会長は、16年度改定から設けられたチェーン薬局への減算措置で、さらなる集中率の要件厳格化により、現行の基準調剤体制加算取得も難しくなっていたとの見方を示した。その上で、18年度に地域支援体制加算が新設されることで、「努力すればいいのかなと思っていたが、努力して取れるものではない」との認識を示した。
実績要件としては、麻薬指導管理加算について、在宅医療へ参画しておらず、外来中心の薬局からハードルクリアの難しさを指摘する声があがっている。また、夜間診療の多い関西に比べ、都内の薬局からは夜間・休日対応の難しさを指摘する声もある。
◎二塚常務理事「正直、納得がいかない」 悔しさにじませ
二塚安子常務理事(大新堂)も、集中率が85%に引き下げられたことで、「うちくらいの規模でもかなり落ちる。基本料はばらつきがある」と見通した。その上で、「技術料はひとりの薬剤師が働いたプロ活動として与えられるものだと認識していた。働く場所の規模や場所で薬剤師のプロ活動の評価に差があるのは根本的におかしい」と首をひねった。さらに、財源論ありきで進んできた改定論議についても、「正直、納得がいっていない」と強調した。
地域支援体制加算についても、「かかりつけ薬剤師という言葉が表に出たときに、薬剤師一人一人のアイデンティティー、首根っこをつかまれたと思ったが、今年はより一層それを感じた」と述べた。経営者としては、「薬剤師として、結果にコミットするとは何かということを考えられる社員を我々は作っていかないといけない。長い将来考えたらいい姿になっていくのかな、と思わないとやっていられない」と嘆いた。
首藤正一副会長(アインホールディングス)は、「一生懸命利益をあげたところが調剤報酬で安くなる。患者から見ると安くて色々な機能がある薬局が育っていって地域に根差した薬局になっていくのではないか」と皮肉った。
この日の記者会見では、NPhAが1月に実施した薬剤師会会費アンケートの結果も公表した。回答は、124社。8827店舗中、6528店舗が日本薬剤師会に入会。日本薬剤師会と日本薬剤師連盟の年会費、FAX処方箋の年間負担額などをあわせ、17億7257万円を負担していることがわかった。なお、前日の2月7日、三師会の会見に臨んだ日本薬剤師会の森昌平副会長は、「大変厳しい保険財政の中、プラス0.19%という中で、既存点数の合理化、適正化を図りつつ、評価すべき部分に配分できたものと考えている」と、山本会長のコメントを紹介していた。