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中医協・費用対効果合同部会が初会合 評価に伴う薬価引上げに各側が否定的見解

公開日時 2017/10/05 03:52

厚生労働省保険局医療課は10月4日の中医協の費用対効果評価部会と合同部会に、費用対効果評価の試行的導入の総合的評価(アプレイザル)の方法と価格調整の在り方を示した。増分費用効果比(ICER)を用いた上で、倫理的・社会的影響を総合的に検討し、価格の引き下げを含めた価格調整を検討する。16年12月に4大臣合意された薬価制度の抜本改革に向けた基本方針では、薬価の引上げを含めて検討するとの一文が盛り込まれている。製薬業界側からも費用対効果評価の良い製品については引上げを求める声があるが、診療側・支払側各側から引上げには否定的な見解が示された。

この日の中医協では、費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会の合同部会の初会合が開かれた。2016年4月に試行的導入された費用対効果評価は、対象品目は、C型肝炎治療薬・ハーボニー配合錠や抗がん剤・オプジーボなど医薬品7品目を含む13品目。18年度の診療報酬改定ではじめて価格調整を行われることとなっている。


◎価格調整はICER、倫理的・社会的影響の観点から


価格調整の在り方として厚労省側は、アプレイザルの評価は各品目のICER、倫理的・社会的影響等に関する観点から考慮すべき要素への該当の有無を示すことを提案した。これまで「とても良い」から「とても悪い」までの5段階での評価を提示していたが、この提案を変更した。倫理的・社会的影響も、①感染症対策といった公衆衛生的観点での有用性、②公的医療の立場からの分析には含まれない追加的な費用、③長期にわたり、重症の状態が続く疾患での延命治療、④代替医療が十分に存在しない疾患の治療—の4項目で、該当すれば1項目につき、ICERの値を一定率割引き、この係数を用いて費用対効果評価を判断する。すでに薬価上で評価されている「イノベーション」や、「小児の疾患を対象とする治療」は除外した。

価格調整については、ICERに応じて、「価格調整を行わない領域」、「ICERに応じて価格を変動させる領域」、「一定の引き下げ幅で価格調整を行う領域」の3領域を設定。判断基準としては、日本での研究と英国での評価基準を参照する。なお、日本での研究では、1QALYを獲得するために75%の人が支払いを許容する金額が146万円、50%の人が許容する金額は485万円、33%の人が許容する金額は905万円。


一方で、比較対象品目に対して効果が同等もしくは増加し、費用が削減される品目については、費用対効果が良く、ICERを算出することができない。そのため、価格調整における配慮を検討することも提案した。


◎支払側・幸野委員「医療保険財政に影響を与える品目の真の価値見極めが趣旨」



中医協支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、費用対効果評価の結果として価格が引き上げられる可能性について言及。「そもそも論だが、対象品目の補正加算の加算率が高く、医療保険財政に影響を与える品目について、真の価値を見極めようということが、費用対効果評価が導入された趣旨だ」と指摘。「一定程度価値があるということを認めれば、価格が維持されて、価値が低いという風に判断されたものは薬価が引き下げられる。その場で評価が良かったから薬価を引き上げるんだという選択肢はないと考えている」と主張した。診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)も、「様々な加算を付けたときに専門家が価値を分析した上で価格を決めた経緯がある」と述べ、費用対効果評価を引上げに用いることに反対の姿勢を示した。

費用対効果評価の結果、一定割合の薬価の切下げを行うことも想定される中で、費用対効果評価を適応する範囲を薬価全体、もしくは薬価上の加算額などだけに批准するのか、その範囲も議論となった。新薬の算定方法である、類似薬効比較方式では比較薬の薬価分(一日薬価合わせ)に有効性・安全性を検討し、加算額が計上される。原価計算方式では、製品総原価に営業利益と営業利益率の補正分が上乗せされる。診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、費用対効果評価の結果として、比較薬の薬価分や製品総原価まで切り込むまで薬価を切り下げることについて疑問を示した。支払側の幸野委員は、「消費税の議論と似ていて、数次の改定を経て一つの薬価になっている。薬価全体に補正をかけるべきだ」と主張。診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)も「全体の薬価についてどういう考え方を適応するか考えるべき」と述べた。


◎厚労省・中山薬剤管理官「薬価制度との整合性を考慮」



これに対し、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、試行的導入について薬価算定上の革新性や有用性の評価と妥当性を検証する目的があるとした上で、「比較薬や既存品に比べて、薬価基準上、臨床的有用性があるとされて薬価が算定されているということを踏まえて、整合性を踏まえることも必要だと考えている」と表明。価格調整の対象を加算部分だけを対象とすることも「あり得る」とした。また、費用対効果評価を検証するための比較薬と、その品目の薬価算定上の比較薬が必ずしも同一ではないことから、比較薬の扱いを考慮する考えも示した。

業界代表の加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬)は、「価格調整の範囲は、加算の評価の範囲内にすべきだと認識している。それを大きく逸脱するということは施行という中では言えないのではないか」と指摘した。「試行品目であっても価格を実際に引き下げるということに関して、対象品目にとっては本格的な実施と当該品目にとっては変わらない。イノベーションの評価が阻害され、ドラッグ・ラグが生じかねないという懸念をもっている」と述べた。対象品目のひとつであるハーボニー配合錠の加算額はゼロだが、対象薬が同様に費用対効果評価の対象となっているダクルインザ錠とソバルディ錠を比較薬としていることから、2剤の加算部分の引下げを当てはめる考えも示唆した。

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