16年度概算医療費 調剤医療費4.8%減 C肝薬の特例再算定と残薬対策など総量規制が影響
公開日時 2017/09/19 03:52
厚生労働省は9月15日、2016年度概算医療費を発表し、医療費の伸び率が前年度比0.4%減、調剤医療費は4.8%減となったことを明らかにした。2016年4月実施の薬価・診療報酬改定では、経口のC型肝炎治療薬を対象とした特例市場拡大再算定を実施し、薬価を大幅に引き下げた。さらに、急増する高齢患者対策として、残薬やポリファーマシーなど医薬品使用の総量規制を導入した。結果的に16年度の医療費は 41.3 兆円となり、前年度比 0.2 兆円減となった。
16年度医療費41.3 兆円の内訳を診療種類別にみると、入院 16.5 兆円(構成割合 40.1%)、入院外 14.2 兆円(34.3%)、歯科 2.9 兆円(7.0%)、調剤 7.5 兆円(18.2%)。医療費の伸び率はマイナス0.4%。診療種別にみると、入院 1.1%増、入院外0.4%減、歯科 1.5%増、調剤4.8%減となった。
医療費の伸び率について同省保険局調査課によると、15年度はC型肝炎治療薬等の抗ウイルス剤の薬剤料の大幅な増加等により高い伸びとなったのに対し、16年度は診療報酬改定のほか、抗ウイルス剤の薬剤料の大幅な減少等により一時的にマイナスに転じた。なお15年度及び16年度の2年間の平均の伸び率は 1.7%。
調剤医療費をみると、16年度調剤医療費は対前年比4.8%減となったものの、処方せん枚数は前年度比0.8%増となった。増加要因として人口の高齢化が影響している。一方、一枚当たり調剤医療費は、前年度比5.5%減となった。内訳をみると、4月~9月が2.6%減だったのに対し、10月~3月は8.2%減とマイナス幅が拡大している。
前回16年度診療報酬改定・調剤報酬改定においては、中医協で残薬問題などが指摘され、特に高齢者が複数診療科を受診した場合について、同じような薬剤を処方された場合に、かかりつけ薬剤師が処方医と相談して処方内容を見直すなどの方向性が示された。医薬品適正使用の観点からは、高齢者のポリファーマシー対策として、かかりつけ薬剤師への服薬指導を強化するなど、薬剤師の職能を重視した調剤報酬体系への転換が重要視された改定と位置づけられる。
◎総量規制論議は費用対効果評価を巻き込んで次のステージへ
16年度概算医療費を見る限り、前回16年度改定で実施した薬剤費の伸びの抑制策が一定の成果をあげたことを実証した。先述の通り、C型肝炎治療薬を対象とした特例市場拡大再算定の導入は、特定の製品、特定の企業などに限定的な影響を及ぼす明らかとなり、製薬業界も一斉に反発している。その一方で医薬品の総量規制は対象となる疾患領域など、該当薬剤の範囲も幅広く、業界全体への影響が懸念されるところ。18年度改定の議論は今秋以降本格化するが、今回の概算医療費で総量規制の影響が大きいことを実証したことから、薬剤費抑制策の切り札として、今後は総量規制の概念が論点に上がる可能性は高い。生活習慣病市場など、マス市場で、かつ薬剤費に影響を及ぼす可能性のある領域については、地域包括ケアシステムなど、地域・エリア単位で医療費の適正化策を論ずるような土壌を整備する流れが強まるだろう。費用対効果評価を活用した総量規制の考え方も今後浮上するとの見方もある。