75歳以上の運転免許更新に認知機能検査必須に 日医が診断書作成手引きを公表
公開日時 2017/03/09 03:50
日本医師会は3月8日の会見で、かかりつけ医向けに策定された「認知症高齢者の運転免許更新に関する診断書作成の手引き」を公表した。高齢ドライバーの自動車事故が増加する中で、12日には改正道路交通法が施行される。免許更新時や違反行為があった時に認知機能検査を実施し、認知症の恐れがあると判断された場合には、違反の有無を問わず、医師の診断を受けることが求められる。これに伴って、認知症の診断が必要な患者は年間4000人から5万人へと急増することも見込まれる。高齢化が進展し、認知症の増加が見込まれる中で、作成の手引きは、地域住民、そして高齢者を支える“かかりつけ医”の役割を明確化するとともに、かかりつけの患者でない場合の専門医との連携の必要性なども明記した。
改正道路交通法では、認知機能や運動機能が低下した高齢ドライバーによる自動車事故が増加する中で、免許更新時や違反行為があった時に認知症機能検査を実施。第1分類(認知症の恐れあり)と判定された場合には、違反の有無を問わず、医師の診断を受けることになる。
◎かかりつけ医 結果が良好でない場合は免許更新取下げの指導も
手引きでは、診断書作成依頼があった場合、少なくとも1年以上定期的に診察を行っている“かかりつけ”の患者と、そうでない場合に分けて手順を明記。いずれの場合も、HDS-RやMMSEなど認知機能検査を行うことを求め、20点以下の場合は認知症の可能性が高いとした。
かかりつけの患者である場合は、これまでの診察や臨床所見などから認知症と診断し、診断書に記載することを求めた。一方、臨床所見や家族・本人の状況から認知症との診断は難しいが、認知機能検査の点数が低い場合や、人格変化、行動の障害が目立つなどのケースでは専門医療機関の受診を勧める。
かかりつけの患者ではない場合は、普段の生活状況などの情報が得られない場合には、専門医療機関の受診を推奨した。認知症が強く疑われるものの、認知機能低下を強固に否定する場合や、認知症ではない旨の診断書発行を求める場合には、慎重な対応を求めた。作成の手引きでは、「患者の求めに応じて、医学的根拠なしに、認知症ではない旨の診断書を作成することは現に慎まなければならない」ことも明記した。
特に地方などでは、運転免許をはく奪されることは、農作業を行う田畑やスーパーにも行く手段を奪い、生活できないことに直結するケースも少なくない。こうした事情が高齢者が認知症を認めない一因ともなっていると指摘されている。そのため、地域包括ケアシステムの支え手である、かかりつけ医には、単に診断書を交付するのではなく、認知症と診断された際の患者の驚きや落胆を受け止め、その上で患者に免許証の更新が認められない可能性があることを丁寧に説明し、納得してもらうことを求めた。
高齢者が自主的に免許を返納した場合には、バスやタクシーの割引など、公共交通機関・自治体などによる優遇措置があることから、かかりつけ医が取下げを指導することも一つの方法とした。また、運転免許を失った高齢者が引きこもりや社会活動から遠ざかることのないよう支援することも、かかりつけ医の重要な役割であることも明記した。