武田薬品・ウェバー社長 米アリアド買収で「血液がん分野を強化、固形がん分野に足場」
公開日時 2017/01/11 03:51
武田薬品のクリストフ・ウェバー社長は1月10日、9日夜に発表した米アリアド・ファーマシューティカルズの買収に関するカンファレンスコール(電話会議)を開き、「今回の買収は当社の戦略に良く合致する。血液がん領域をより強化し、固形がん領域に足場を持つことができる」と述べ、重点分野のひとつに位置付けるがん領域を強化・推進するための戦略的買収だと強調した。
今回の買収は、アリアド社が米国で販売中の慢性骨髄性白血病治療薬アイクルシグ(一般名:ポナチニブ)、同じく米国で申請中のALK陽性非小細胞肺がんのセカンドラインに用いる第二世代低分子ALK阻害薬ブリガチニブを取得することがねらいのひとつ。ウェバー社長は、「今回の買収は米国市場を獲得するものではなく、グローバルの市場を獲得するもの」と話し、両剤を全世界で展開していく考えを示した。日本での開発・上市スケジュールについて武田薬品広報部は本誌取材に対し、「これから開発計画を検討していく」と説明した。
■ALK阻害薬ブリガチニブは「ベスト・イン・クラスの可能性」 年間売上10億ドル超を期待
武田薬品は悪性リンパ腫治療薬アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン)や多発性骨髄腫治療薬ニンラーロ(イキサゾミブ)などを販売している。アイクルシグを製品ラインナップに加えることで、タケダの血液がんフランチャイズは白血病まで拡大する。アイクルシグの16年売上は1億7000万~8000万ドルの見込み。今回の買収完了後、すぐに武田の売上収益に貢献する。
ブリガチニブは、ウェバー社長が「今回のバリュードライバーのキーになる」というほど期待の高い開発品。非臨床データでは、既存のALK阻害薬と異なり、耐性変異への幅広い活性が確認され、非小細胞肺がんに多い脳転移への活性もみられるという。このためウェバー社長は、「潜在的にベスト・イン・クラスのALK阻害薬になる可能性がある」と紹介した。年間ピーク時売上は10億ドル超を見込んでいるとしている。
米国での非小細胞肺がんのセカンドライン適応の審査終了目標日は今年4月29日。ファーストライン適応は、米国でフェーズ3段階にある。上市となれば、武田としては、抗がん剤で固形がんに本格展開することになる。
■買収額は約6000億円 ナイコメッド社、ミレニアム社に次ぐ規模
武田はアリアド社を2月末までに約54億ドル(約6000億円)で買収する予定。買付け価格は1株あたり24ドルで、これはアリアド社の年初の株価に対して75%のプレミアムとなる。買付け期間は1~2月で、アリアド社の発行済み株式の全てを取得する。なお、武田としては、2011年のスイスのナイコメッド社(買収額96億ユーロ、当時のレートで約1兆1000億円)、2008年の米ミレニアム社(同88億ドル、約9000億円)に次ぐ規模の買収となる。
アリアド社のParis Panayiotopoulos社長は9日夜、「武田薬品の一員になることを大変うれしく思う。当社のミッションである希少がんの患者さんに対する治療薬を創製・開発し、お届けすることを加速できる」とコメントしている。