メディパルHD・中期ビジョン 新規事業拡大と利益創出を重視 1800人超のAR最大活用 学術販促強化
公開日時 2016/08/02 03:51
メディパルホールディングス(HD)の渡辺秀一社長は8月1日、2016~18年度(2019年3月期)までの3カ年中期ビジョンについて東京都内の本社で記者会見し、「売上を上げていけば、利益がついてくる時代は終わった」と述べ、売上の拡大より利益の創出を重視して取り組む姿勢を示した。最終年度営業利益目標は500億円と、前期(16年3月期)より2割近い増益を見込む。うち75億円以上を既存事業以外の新規事業や医療機器卸事業などで生み出す。新規事業としては同社MSで認定資格を持つ1800人以上の「AR」を最大限活用し、専門性高い新薬を持ちながら十分な営業部隊を持たない企業の学術プロモーション、PMSの受託を強化。そのほか医療機器卸事業も拡充し、「M&Aを前向きにやっていく」との姿勢を表明した。
中期ビジョンは、少子高齢化と人口減、世帯年収400万円以下の世帯の増加といった社会環境の変化と、医療費の効率化、予防医療、セルフメディケーション、地域包括ケアの推進といった医療環境の変化を見据えて策定。医療用薬卸と日用品・一般薬卸の既存事業の拡大の一方で、新規事業の創出、グループ企業の成長分野での事業展開や新規事業の展開で、収益基盤の拡大とグループ全体の成長につなげる。
その中で、大型品の特許切れなどでこれまでのような売上成長は望めないとして医療用薬卸事業は6.0%増にとどめる一方、営業利益は18.2%増を計画し、利益創出重視の姿勢を鮮明にした。
渡辺社長 MR数減少は「卸のチャンス」
グループ全体の営業利益目標500億円。既存事業以外から75億円以上を生み出すとし、うち50億円は新規事業から計画する。AR活用の学術販促は、主に専門性高い新薬を持ちながら十分な営業部隊を持たない企業から新たに20製品以上受託し、25億円(前期10億円)を生み出す。またPMS受託も新たに5製品以上受託し、11億円(同4億円)を生み出す。渡辺社長は、MR数減少は「卸のチャンス」との認識を示し、ARの活用した事業の拡大に意欲を見せた。
新規事業以外では、グループ内の医療機器卸事業を拡充する方針。医療施設では、医薬品以外にも医療機器も扱ううえ、今後ニーズが高まると見て、収益貢献できる事業に改めていく。営業利益として10億円の寄与を見込む。M&Aによる事業拡大も視野に入れる。
同社の高機能物流センター(ALC)では今後、医薬品だけでなく医療機器も一括して受注、配送できる機能を持たせていく方針であり、医療機器卸事業の強化により差別化を図る。
医療用薬卸事業 設備投資に700億円 5地域にALC新設
医療用薬卸事業では、設備投資に700億円を計画した。顧客により近い立地で配送の利便性、効率性を高めたALCには481億円を計上し、新たに岡山(稼働予定17年3月)、埼玉(同)、広島(18年4月)、関東(19年3月)、阪神(19年11月)を整備する。これにより12施設になり、ALC投資はほぼ完了予定という。
【中期ビジョン経営目標】18年度目標(15年度実績)増加率
売上高3兆2600億円(3兆0281億円)7.7%増
(医療用薬卸事業2兆2500億円(2兆1234億円)6.0%増)
営業利益500億円(422億円)18.3%増
(医療用薬卸事業290億円(245億円)18.2%増)
経常利益650億円(551億円)17.9%増
(医療用薬卸事業364億円(315億円)15.2%増)