厚労省・武田医薬局長 地域包括ケア時代に合致したMR像の再定義を プロモーションコードは「再検討する時期」
公開日時 2016/07/11 03:52
厚生労働省の武田俊彦医薬・生活衛生局長は7月8日、本紙取材に応じ、後発医薬品80%時代の到来や地域包括ケアシステムの構築など、医療環境がシフトする中で、時代に合致したMR像を再定義することが必要との考えを示した。武田局長は、医療現場の変化に伴い、MR活動もこれまでの病院中心から地域中心へと変化する必要性を指摘。「企業のプロモーションにどういう規制をかけるか考える時期にきているのではないか」との認識を示した。その上で、「健全な業界は健全な規制が作るという観点に立てば、どういうルールを決めれば健全な業界になるのかを考えるのがこの局の役目。業界と対話して業界からも積極的な提案をしていただきたい」と述べた。武田氏は6月21日付で医薬・生活衛生局長に就任。今後重点的に取り組む課題として、「高額薬剤の最適化使用」と、「健全な業界の健全な発展への環境作り」をあげた。
(高額薬剤については、本紙既報。記事はこちら)
◎MR活動も“病院中心”から“地域”へ
武田局長は、「適正な規制があってこそ、健全な業界が育つ」と述べ、業界の健全な発展のためには規制行政の果たすべき役割が大きいとの見方を示した。その上で、「地域包括ケア時代の適正な製薬企業の活動、時代の変化を踏まえた健全なプロモーション活動の確保などについても、関係局と連携を取りながら考えていくべき課題」とした。
武田局長は、後発医薬品80%時代の到来や地域包括ケアシステムの構築で医療現場にパラダイムシフトが起きているとの認識を示し、その結果として「自ずとそれぞれの職種に期待される役割は変わる」と述べた。
地域包括ケア時代に入ったことで、地域で生活する患者を処方医や薬剤師、看護師、ケアマネージャー、ヘルパーなど多職種が支える時代に入った。武田局長は、企業のプロモーション活動を病院中心から地域中心に改める必要性を指摘。その上で、地域医療のニーズに合致した情報提供や副作用の情報収集を行い、製薬企業が責務を果たすためには、「いまの仕組み、いまの体制、いまのプロモーションの自主基準(プロモーションコード)が時代に合うのか再度検討すべきではないか」と述べた。
過去には、添付販売やキャッシュバックなどの景品類の提供を取引誘引とする激しい販売競争が展開され、プロモーションコードが策定された経緯がある。最近では、降圧薬・ディオバンの臨床研究をめぐる誇大広告などの事件などもあった。武田局長はこうした現状を受け止めた上で、「これまで流れてきた規制といま現時点における実態と本来必要なプロモーション規制とずれてきているのではないか」と指摘し、新たなモデルを構築することの必要性を強調した。
製薬企業がプロモーションコードへの配慮などから、ケアマネージャーやヘルパーなど介護職への情報提供を行えないとの声もあるが、「必要な所に幅広く情報提供するのが本来的なMRの役割。薬を社会で使ってもらっているという企業の社会的責任として考えるべきではないか」との考えを表明。「ケアマネージャーをはじめとして、地域の多職種の場に積極的に情報を届けるということも企業に考えてほしい。今のルールではできない、ということであれば、業界に考えていただく必要があるのではないか」と述べた。
MR数については、「あらかじめ多いとか少ないとか、どれくらいが適正数だというつもりはない」と断った上で、インターネットの浸透や、病院の訪問規制が強化されていることなどに触れ、「少なくともいままでのようなことしかやらないのであれば、今の数はいらないというのは自明のことではないか」と述べた。その上で、「地域包括ケア時代の新たな役割を議論しなければ、単に人数減らせばいいじゃないか、という議論になってしまう可能性がある」との見方を示した。
◎副作用情報の適正な収集「先発メーカーのMRに依存しない形の構築を」
もう一つ重要な観点が、後発医薬品数量シェア80%が与える影響だ。副作用情報の適正な収集、安全性情報の迅速な提供などを先発メーカーが責務として果たしてきたとの認識を示した上で、「副作用報告を先発のMRに依存しない形で考えないと全体のシステム変更はうまくいかないのではないか」との考えを表明。薬剤師をはじめとした医療現場や、後発メーカーがこれらの責務を担う必要性を示唆した。
一方で、後発メーカーについては、「MRを増やすということで、自社のシェアを高めようというのは時代に逆行している。後発品はコストを下げるということを考えない限り、成長は見込めない」と述べた。
◎高額薬剤 最適化使用GL策定で医師要件、患者要件明確化
高額薬剤議論については、「革新的医薬品の中には有効性の発現の仕方や安全性プロファイルが既存の医薬品と大きく異なることがある」と説明。最適な使用を進めていくために関係学会の協力を得ながら、承認された範囲の中で「医薬品等の使用が最適だと考えられる対象患者、医薬品等を適切に使いこなせる医師や施設などの要件を記載した使用ガイドラインを作成・周知したいと考えている」と述べた。高額薬剤をめぐっては中医協で診療側から薬価制度の抜本的な見直しを迫る声も聞かれるが、「薬価は承認の後からしかつかないので、承認時点でというのは難しい。中医協の指摘は、医療費が大きいというよりは革新的医薬品、新規作用機序の薬剤の話であるため、この対応である程度お答えできるのではないか。中医協に対して医薬局としての考え方を説明したい」と述べた。
一問一答は、Monthlyミクス8月号(8月1日発行)に掲載予定。