塩野義・15年度業績 国内医療用薬は0.4%増収 長期品比率22%でも打撃大きく
公開日時 2016/05/13 03:50
塩野義製薬は5月11日、2016年3月期(15年度)決算を発表し、国内医療用医薬品売上は1621億円、前期比0.4%増だった。高脂血症治療薬クレストール、降圧剤イルベタンファミリー、うつ・疼痛用薬サインバルタの戦略3品目の売上合計が746億円、7.1%増と堅調に伸びたが、長期収載品の減収影響も大きかった。手代木功社長は同日開いた決算会見で、「(国内医療用薬売上に占める)長期収載品比率は22%ではあるが、古い製品の痛みを負っている」と述べ、後発品の市場浸透の速さとその影響の大きさを指摘した。
手代木社長は決算説明の中で、最主力品クレストールの国内特許切れ時期に触れ、「17年末から18年の頭に後発品が出ることを想定している」と話した。そして16年度は、17年度以降のクレストールの国内特許切れに備える期間と位置づけ、「一定の投資を行う」と語った。
日本での投資案件として挙がっているのは、15年6月に発売したクレストールOD錠への切替促進活動のほか、現在申請中の▽オピオイド誘発性の便秘症に用いるナルデメジン(一般名、16年3月申請)▽小児AD/HD用薬グアンファシン(一般名、16年1月申請)――のマーケティング及び上市準備。「特別なチームを立ち上げて取り組んでいる」という。ナルデメジンに関しては、中等度~高度のがん性疼痛に用いるオピオイド鎮痛薬オキシコンチンを販売しており、相乗効果も期待できる。
15年度に前期比39%増となったサインバルタも、特に疼痛領域で育薬していく。サインバルタは「線維筋痛症に伴う疼痛」の適応に加え、16年3月に「慢性腰痛症に伴う疼痛」の適応を追加したが、その審査過程で同剤の自殺企図などのリスクを踏まえた安全対策の徹底が求められた。手代木社長は、共同販促企業の日本イーライリリーと、適正使用の推進とともに営業・マーケティング戦略の深化に意欲を示し、「サインバルタを1000億円商品に仕上げたい」と話した。「変形性関節症に伴う疼痛」の適応追加も申請している。
■連結業績は2ケタの増収増益 ロイヤリティ収入1000億円突破
15年度の連結業績は売上3100億円(13%増)、営業利益914億円(81%増)と2ケタの増収増益だった。円安効果もあって、クレストールや抗HIV薬を中心とするロイヤリティ収入が1018億円と1000億円の大台を超えたことが主因。
利益面では、選択と集中、優先順位付けの徹底による販管費の減少も増益に寄与した。「コストをどのようにマネジメントするかという意識、力が非常に強くなった」(手代木社長)ことが背景要因としてある。同社では、14年度に公表した長期計画では20年度に経常利益1250億円との目標を掲げたが、この日の会見で2年前倒しの18年度に達成する目標を新たに示し、「成長を加速させる戦略的成長投資を検討していく」(同)とした。
なお、16年度は、米国でクレストールの特許切れを迎えるため同剤のロイヤリティ収入は3割減を見込むが、抗HIV薬のロイヤリティ収入は5割増と見込み、結果として16年度のロイヤリティ収入は計1149億円、12%超の増と計画している。
【15年度連結業績(前年同期比) 16年度予想(前年同期比)】
売上高 3099億7300万円(13.1%増)3180億円(2.6%増)
営業利益 914億600万円(81.5%増)915億円(0.1%増)
純利益 666億8700万円(51.4%増)710億円(6.5%増)
【15年度の国内主要製品売上高(前年同期実績)16年度予想、億円】
クレストール 437(436)415
イルベタン類 157(151)151
サインバルタ 152(109)193
オキシコンチン類 100(103)105
フィニバックス 38(40)39
ディフェリン 30(39)3
ピレスパ 60(54)63
ラピアクタ 20(26)23
フロモックス 113(126)90
リンデロン等外用 80(80)74
クラリチン 44(43)35
フルマリン 42(46)37
ロイヤリティ収入 1018(607)1149
内、クレストール 476(474)330
内、HIVフランチャイズ 405(58)620