受け継いだイズム “自律”精神で企業ブランドを向上
サノフィ株式会社
糖尿病・循環器ビジネスユニット
営業本部
関東・新潟支店 千葉第1営業所
アシスタントマネジャー
濱田 理 さん
島根大学医学部附属病院、中国地域でのKOLマネジメント(広島県)を経て、現職。全世界から同社のパフォーマンス上位1%が集う「Champions for Customers」にも選出された。フランス・パリへの滞在を前に、「フランスの本社訪問も貴重な機会なので、楽しみ」と語る。前回フランスを訪れたときは、新婚旅行でモンサンミッシェルしか訪れることができなかった。「ルーブル美術館には行きたい」と話す一面も。
本コーナーは、年に1回、“医療への貢献”をテーマにナンバーワンMRを決めるMR#1コンテストのファイナリストの日常のMR活動の中から、医療従事者から評価されるポイントを探ります。 |
「先々を見越して行動している。常に効率と優先順位、選択と集中を考える」――。ナンバーワンMRを決めるMR#1コンテストで、ビジョナリー賞を受賞したサノフィ株式会社の濱田理さん。MR#1コンテスト出場の裏には、当時の支店長の推薦があった。売上実績、コンプライアンスに則った活動の実践、患者・医療関係者への貢献に取り組む活動などを評価し、同社のパフォーマンス上位1%のMRに贈られる「Champions for Customers」にも選出されるなど、着実に成果を出している。濱田さんのMR活動を支えるのは、状況を冷静に分析し、それに基づいて先を見越したプランニングを立案、そして計画の実効性の高さだ。訪問規制などで環境変化が厳しい中でも、こうした強みはMRとしての存在感を示している。(望月 英梨)
「医師との面談時間が短くなっている」。濱田さんは、現状のMR活動での最大の変化をこう話す。担当する千葉大学医学部附属病院は完全アポイント性を敷く。地域医療連携や多職種連携の重要性が高まる中で、カンファレンスの開催頻度が増えた。医師が多忙を極める中で、医師に会うこと自体も難しくなっている。拍車をかけるのが、インターネットの普及だ。情報が氾濫する中で、提供する情報の“質”が問われる時代になった。「限られた面談時間の中で、必要な情報を取捨選択し、整理し、ポイントを短時間で伝えられるかが、MRの存在価値だ」と濱田さんは話す。
限られた時間を活かすための努力は欠かさない。医師の研究内容の把握はもちろんのこと、患者像の把握にも注力する。千葉大学医学部附属病院では、2型糖尿病の教育入院だけでなく、妊娠糖尿病や1型糖尿病患者も多い。妊娠糖尿病に関連した情報を迅速な提供にす注力した結果、パス作成のニーズを知ることもできたという。医師や薬剤師の志向を知り、精査した情報を継続的に提供することが、MR活動にフィードバックされる好循環を生んでいる。
時間を1分1秒無駄にしない計画性長所に
情報提供を行うタイミングにも注意を払う。1週間の医師の行動を把握するだけでなく、状況把握にも努める。例えば、手術やカンファレンスで疲れ切った医師に耳を傾けてもらうのは難しい。こうした時間帯を避け、自身の空き時間をマッチングさせる。医師に都合の良い時間を選択してもらうことで、待ち時間を減らし、効率的な面談が実現できるというわけだ。
こんなエピソードがある。濱田さんは、同院の関連施設を担当MRとともに訪問。結果として自社製品の採用率アップにつながったという。担当施設内で医師とのアポイントを効率よくマネジメントすることだけでも難しいが、さらに隙間時間を見つけ、活用したことが結果につながった。「新薬の承認、上市のタイミングは、多くの情報を発信することが重要。最新情報を伝えることができるよう、期間で優先順位を決めた」と話す。
直属の上司である糖尿病領域営業本部首都圏支店千葉第1営業所の安武秀政営業所長は、「ターゲティングとアクションプランがしっかりしている。時間を1分1秒無駄にしない」と評価する。
「先々を見越して行動している。先手を打って動いていれば、ビジネスはスムーズに動く。事象が起きてしまってから対応するのでは後手となってしまう」という濱田さんの考えが迅速な行動を産んだ。安武営業所長は、「バランスと変化への対応力が長所。環境変化が厳しい中で、情報を冷静に分析できること。分析したことを迅速に行動に反映できること。そしてそれが合っているか判断できること。判断してよければ、自分だけでなく、周囲に影響を出すこともできる」と評価する。
フットケアで地域医療連携構築
大学病院担当、本社でのキーオピニオンリーダー(KOL)マネジメント担当を経て、現職に就いた濱田さん。本社での経験を強みに、営業所のMRの引き上げ、さらには営業所の垣根を越えた地域への波及効果も視野に入れる。
そのひとつの取り組みが、増加の一途をたどる糖尿病性合併症を見据えた地域医療連携へのアプローチだ。千葉大学医学部附属病院は2014年、「あらゆる合併症の制圧を目指して」を掲げ、糖尿病、代謝内科、眼科、腎臓内科、神経内科、臨床栄養部、看護部などで連携した“糖尿病コンプリケーションセンター”を立ち上げた。濱田さんは、壊疽による下肢切断を防ぐために、フットケアの重要性に着目。「千葉大学コンプリケーションセンターとの連携を考える会」を立ち上げ、早期・継続的介入の重要性を伝えた。
「特に非専門医では継続的な治療・評価が難しいケースもある」と濱田さん。合併症の周知に心がけた結果、3か月で22人の患者が紹介された。患者からも、「自分の足がこんなにきれいになるなんて感動した」、「水虫や巻き爪が治って、糖尿病治療に前向きになった」との声が寄せられたという。
「糖尿病の合併症を抑制し、患者さんの健康寿命を延伸させることが使命」と語る濱田さん。患者、非専門医と専門医との橋渡しを担うことで、「壊死に至る患者さんをゼロにできれば、MRとして医療に貢献できたのではないか」と話す。脳血管疾患など周辺疾患を担当するMRとの連携も視野に入れる。
将来的には、「本社のマーケティング部で、MRの行動を変え、顧客に求められるMRを全社的に作っていきたい」と濱田さん。その眼は、未来を、そして全国を見据えている。