米国人の大多数、メディケアに政府の価格交渉求める カイザー財団調査
公開日時 2015/08/18 03:50
米国では、インターフェロン治療を不要とする新規C型肝炎治療薬や効果の高い分子標的抗がん剤の登場など患者に福音をもたらす薬剤が増えているが、一方で、公的保険メディケア(高齢者保険)およびメディケード(低所得者保険)の財政負担を逼迫させているのも事実だ。しかも、メディアケアの運用を行う連邦政府には価格交渉権がないのが改めて注目されている。そのようななか、9割近い国民は、メディケアにおいては政府に価格交渉権を持たせるべきと考えていることが、非営利医療団体のKaiser Family Foundation(KFF)が実施した、メディケアに関する調査で分かった。
KFFは、今年4月23日から5月31日にかけて、全米1849人の成人(18歳以上)を対象として、メディケードやメディケアに対する考え方や同制度の今後のあり方などについて電話アンケート調査を行った。KFFが7月17日発表した。
KFFは、民間保険会社Kaiser Permanenteのグループ団体。政府の医薬品購入に関しては、政府が交渉を行うと民間市場への介入になるとの観点から、政府の交渉が禁じられているが、87%の国民は、この点が薬価を押し上げる要因と考え、政府に価格交渉を認めるべきと回答した。
同じKFFが7月に実施した調査でも、7割を超える国民が処方せん薬の薬価が高いことを問題視していることが分かっている。支持政党別に政府に価格交渉を認めるべきかの設問については、民主党支持者では94%、共和党支持者では85%、無党派層では84%といずれも大多数がこの意見に賛意を示した。
メディケアあるいはメディケードが重要な制度であるかについての設問では、77%がメディケアは非常に重要と答え、63%がメディケードは非常に重要と回答した。支持政党別では、民主党支持者では89%、共和党支持者では69%、無党派層では72%が非常に重要と答えた。
また、60%の米国人はメディケアが高齢者のために適切に運営されていると答え、50%はメディケードが低所得者のために適切に運営されていると回答した。しかし、30%がメディケアは適切に運営されていないと答え、33%がメディケードは適切に運営されていないと答えた。
さらにメディケアなどが身近な制度になっていることも今回の調査で浮き彫りにされた。64%がメディケードやメディケアに個人的つながりができたと回答した。その内容は、自分自身が保険給付対象者になったか、対象者だったことがある、あるいは、家族や友人に給付対象者がいるなどだ。
今後のメディケアのあり方については、すでに今年前半に実施されたが、給付対象者に保険料を富裕層では値上げするという案に賛成が58%だったが、給付年齢を65歳から67歳に上げることに賛成は39%、給付対象者全員の保険料を値上げすることに賛成は31%などとなった。
オバマケア推進の好影響といえるのか、公的医療保険に前向きな国民が増えてきた傾向が今回の調査から垣間見えるようである。