ノバルティス 医師主導臨床研究にMR関与 研究支援に賞品用意も 二之宮社長「あるまじき行為」
公開日時 2014/01/24 03:50
ノバルティスファーマは1月23日、同社が販売する慢性骨髄性白血病(CML)治療薬ニロチニブ(製品名:タシグナ)に関する医師主導臨床研究「SIGN」にMRが関与していたと指摘された問題で記者会見した。二之宮義泰社長(写真)は、MRの不適切な関与があったことを認め、謝罪した。
問題となった研究は、CML患者を対象に、同社の既存薬イマチニブ(製品名:グリベック)もしくはBMSのダサチニブ(同:スプリセル)からニロチニブへの切り替え前後の副作用の変化を検討する内容。研究参加施設の担当MR18人のうち8人が、医師が本来行うべきアンケート票のFAX送付を代わりに受け取り、研究事務局に届けていた。さらに、アンケート票の獲得をMRに促す取り組みの一環として、賞品が用意されていた。これは、社内で「インセンティブプログラム」と呼ばれ、同社血液・腫瘍領域事業部東日本営業部長が了承していた。
インセンティブプログラムでは、研究参加施設を担当する同営業部東京第一ブロック7人と第二ブロック8人を対象に、アンケート票をより多く獲得したチームにコーヒーチケット(9000円分)と会食費(2万5000円分)を用意していた。このような行為が医師主導臨床研究の中で実施された点について二之宮社長は会見で、「患者様のいのちに関わる医薬品を開発・提供している製薬企業としては、あるまじき行為であると深く反省している」と述べた。
◎第三者委員会立ち上げ 3月目途に調査結果まとめる
同社は昨年、ディオバンをめぐる医師主導臨床研究の問題を受け、7月に5日間プロモーション活動を自粛して社内教育を実施。医師主導臨床研究には研究者が実施すべき業務に社員は一切関わらない方針を打ち出し、営業活動の範囲を明確化した新たなルールを11月5日から実施していた。しかし、昨年12月の時点でもFAXによらないアンケート票が研究事務局に届いており、MRによるアンケート票の受け渡しが続いていた疑いがある。二之宮社長は「再びこのような事態を招いてしまったことは言い訳のしようがなく改めて深くお詫び申し上げる」と話した。
同社常務取締役でオンコロジー事業本部の淺川一雄本部長は、同社による研究組織へのアンケート用紙印刷の手伝いやプロトコール委員会への会議室の貸与があった事実も明らかにしたうえで、「これらにとどまらず、より広範で憂慮すべき関与があった可能性を否定できない」と説明。同社は、外部専門家による第三者委員会を立ち上げ、3月を目途に調査結果をまとめる。
◎試験は中断に
SIGN研究は東京大学血液腫瘍内科の黒川峰夫教授を試験責任者として12年5月に開始され、22施設が参加していた。UMIN(臨床試験登録システム)への登録がなされており、それによると14年9月30日までの観察が予定されていた。今回の問題発覚を受けて試験は中断されている。