BRAF変異陽性の進行メラノーマ 分子標的薬2剤併用で副作用が低頻度に
公開日時 2012/05/18 05:00
BRAF遺伝子変異陽性のメラノーマに対し、分子標的薬を2剤併用することで、副作用頻度が低減するとともに、標準療法であるvemurafenib単剤を上回る治療成績を示すことが示唆された。BRAF阻害剤に対する耐性獲得の遅延も期待される。臨床第1相/第2相試験のデータを一部解析した結果から分かった。H.Lee Moffitt Cancer CenterのJeffrey Weber 氏が、米国腫瘍学会(ASCO)年次学術集会に先だって行われたPresscastで現地時間の5月16日、報告した。(医学ライター・中西美荷)
メラノーマの約半数は、BRAF遺伝子変異陽性で、MEK経路も活性化されていることが知られている。現在、BRAF V600遺伝子変異陽性の治癒切除不能または転移性メラノーマ(悪性黒色腫)に対しては、BRAF阻害剤vemurafenib単独療法が標準治療となっている。Vemrafenibは、米国FDAでBRAF変異の診断薬とともに2011年8月17日、欧州医薬庁でも2012年2月20日に、BRAF変異陽性の進行メラノーマに対する適応を認可された薬剤だ。
Vemrafenibが臨床現場に登場する以前の標準治療薬であった、ダカルバジンと比べ、全生存期間(OS)を有意に延長させたことも報告されている。一方で、多くの患者は、時間経過に伴い、同治療への耐性を示すことも分かってきた。
今回結果が報告されたのは、BRAF阻害剤・dabrafenibとMEK阻害剤・trametinibの併用療法の一連の臨床第1相/第2相試験の一部として検討された安全性・有効性のデータだ。Dabrafenib/trametinib併用は、BRAF変異陽性の固形腫瘍を用いた前臨床試験で、BRAF阻害剤への耐性発現を遅らせるとともに、BRAF阻害剤に起因する増殖性の皮膚障害を予防することが示されている。
解析の対象は、V600BRAF変異陽性で測定可能病変を有するメラノーマ患者125例。Dabrafenib(mg1日2回[BID])/trametinib(mg1日1回[QD])4用量(75/1、150/1、150/1.5、150/2)のいずれかを投与し、その安全性を検討した。有効性は、BRAF阻害剤未治療77例について解析した。
◎Webber氏「MEK阻害薬併用による皮膚障害の発症抑制は意義が大きい」
その結果、一般的なグレード3以上の有害事象は、発熱52%、悪寒38%、疲労感37%、吐き気34%だったが、減量を要したものはそれぞれ23%、10%、1%、1%だった。またWeber氏は、前臨床での検討から期待された通り、皮膚障害が低頻度だったことを指摘。扁平上皮癌(SCC)は3%、日光角化症5%、皮膚乳頭腫2%、皮疹22%だったことを紹介した。
BRAF阻害剤では、増殖性の皮膚障害が高率で発生することが報告されており、扁平上皮癌(SCC)やケラトアカントーマなどの二次発がんが懸念されている。Vemurafenib単剤の臨床第3相試験でも、グレード3のSCCが12%、グレード2のケラトアカントーマ2%、グレード3のケラトアカントーマが6%報告されている。
そのため、Webber氏は「MEK阻害剤の併用によって、BRAF阻害剤による皮膚障害の発症が抑制されたことは、非常に意義が大きい」と述べた。
BRAF阻害剤未治療77例の確定奏効率(ORR)は57%(95%CI: 45.4%-68.4%、CR8%、PR49%)、SD38%を含めた臨床コントロール率(DCR)は95%、無増悪生存(PFS)期間中央値は10.8カ月(95%CI: 5.3カ月~未達)だった。
中でもdabrafenib150mgBID/trametinib 2mgQD(24例)で、ORR 63%(CR8%、PR54%)、DCR100%、PFS中央値未達と、優れた成績だった。そのため、臨床第3相試験は、このレジメンを採用して進められることもWeber氏は明らかにした。
なお、今回のPresscastは、6月1~5日に米国・シカゴで開催される年次学術集会に先立って行われたもの。同日に、一般演題の抄録もOnlineで公開された。今年の年次学術集会のテーマは「Collaborating to Conquer Cancer(共にがん克服のために)」となっている。