【ASCO特別版】ADT+RT併用 局所進行前立腺がんで10年OSとDFSを有意に向上
公開日時 2012/06/11 05:00
局所進行前立腺がん患者において、アンドロゲン遮断療法(ADT)+放射線療法(RT)併用がADT単独と比べ、有意に10年全生存(OS)と疾患特異的生存率(DFS)を向上させることが分かった。ADT+RT併用療法と、ADTの単独療法を比較検討した、集団間無作為化臨床第3相試験の最終解析から示された。英Cardiff UniversityのMalcolm Mason氏が、6月1~5日まで、米国シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)のOral Abstract Sessionで5日報告した。
局所進行前立腺がんにおいて、放射線療法をホルモン療法に追加することによる治療ベネフィットは、最近の知見で確立されつつあるものの、依然として放射線療法そのものの役割や有効性に疑問を示す意見が少なくない。
同試験は、NCI CCTG、SWOG、MRC-UKの集団間無作為化第3相試験。2009年に報告された中間解析で、すでに併用療法がOSとDSSを改善させたことが示されている(7年OS:74% vs 66%、ハザード比0.77、95% CI: 0.61 – 0.98、p=0.033。7年DSS:90% vs 79%、ハザード比0.54、95% CI 0.37 – 0.78、p=0.0001)。
対象は、局所進行性前立腺がんもしくは限局性前立腺がん患者1205例で、登録期間は1995年~2005年まで。持続的ADT療法+RT併用療法(603例)、持続的ADT単独療法(602例)に割り付けられた。
単独療法は、両側精巣摘除もしくはLHRHアゴニスト投与(2週間の抗アンドロゲン投与、継続は任意)とし、併用療法はADTに加え、骨盤照射(45Gy/25fr 5週間)と前立腺照射(20-24Gy/10-12fr 、2-2.5週間)とした。ただし、担当医の判断で骨盤照射が不適切とされた場合、前立腺のみに照射することとした(この場合、65-69Gy/35-37frを7~7.5週間)。
主要評価項目はOS、副次評価項目はDSS、進行までの時間、症候性局所管理、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)などとした。
年齢(中央値)は両群とも70歳、TカテゴリーはT2c以下が単独群で11%、併用群が10%、T3/T4がそれぞれ89%、88%だった。グリーソンスコアは7以下が両群ともに81%、8-10が両群とも18%だった。またPSA値は20 ng/ml未満以上が単独群で37%、併用群36%、20-50が両群とも38%、>50が単独群で25%、併用群で26%だった。
併用群での照射線量は64Gy以下が43例、65-69Gyが533例、>69Gyが10例だった。照射部位は骨盤+前立腺が420例で、前立腺のみが166例だった。
◎腸に関するQOL 治療開始早期に差も36カ月後には同等に
最終解析の結果、10年OSは単独群が49%だったのに対し、併用群は55%(HR=0.70, 95%IC:0.57-0.85, p=0.0003)で、併用群が有意に高いことが分かった。
追跡期間(中央値)の8年で465例(単独群260例、併用群205例)が死亡し、このうち前立腺がんで死亡したのは199例(43%)だった(単独群134例52%、併用群65例32%)。その他の死亡原因は、心血管疾患または脳卒中が70例(単独群37例、併用群33例)、他のがんが75例(それぞれ31例、44例)だった。
また10年間のDSSも、単独群の15%に対し、併用群は26%と、併用群で有意に高い結果となった(HR=0.46, 95%IC:0.34-0.61, p<0.0001)。
腸に関するQOL(EORTC QLQ)では、直腸での症状や下痢、泌尿器の症状が、治療開始早期に併用群でわずかに高い傾向が見られたが、36ヵ月後には単独群と同等となっていた。
探索的解析として、併用群において骨盤と前立腺の両方を照射した被験者と、前立腺のみを照射した被験者を比較した結果、OS、DSSともにハザード比に差はなかった(OS:ハザード比0.90、p=0.57、DSS:ハザード比0.65、p=0.15)。
これらの結果から、Mason氏は、ADTと放射線療法の併用は、「放射線療法が適切とされる局所進行前立腺がんの全患者に提供されるべき」と結論付けた。また同併用は、エビデンスレベル1で支持された、ガイドライン推奨の唯一の治療方法であることを強調した。