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【ACC.13速報】PLATO試験サブグループ解析 非ST上昇型ACS対象にチカグレロルが有意に心血管イベント抑制

公開日時 2013/03/12 05:00

抗血小板薬・チカグレロルは、アスピリンとの併用下で非ST上昇型急性冠症候群(ACS)患者における心血管イベントの発症を、アスピリン+クロピドグレル群に比べ、有意に抑制することが分かった。同 剤の臨床第3相試験「PLATO(Platelet Inhibition and Patient Outcomes)」のサブグループを後ろ向きに解析した結果から示された。3月9~11日の日程で開催中の第62回米国心臓学会議(ACC.13)の セッション「ACS-New Agents and Approaches」で9日、Uppsala UniversityのDaniel Lindholm氏が報告した。


同試験の本解析結果では、発症24時間以内に入院した中等度~高リスクのST上昇型/非ST上昇型ACS患者1万8624例を対象に、アスピリン併用下において、チカグレロルがクロピドグレルを上回る心血管イベント発症抑制効果を示している。


今回の解析では、このうちST上昇型急性冠症候群患者1万1080例(チカグレロル群:5581例、クロピドグレル群:5499例)について、両群の有効 性と安全性を比較した。10日以内に侵襲的治療(経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG))を施行されず、薬物療法 のみで管理されていた患者はチカグレロル群2708例、クロピドグレル群2658例だった。主要有効性評価項目は、心血管死+心筋梗塞+脳卒中の発生率。


患者背景は、本試験の対象者と比べ、糖尿病(25%対28%)、高血圧(65%対70%)や心筋梗塞既往(21%対25%)の合併率が高い傾向がみられ た。一方、入院中の血管造影検査施行率(81%対73%)は低率で、薬物療法のみで管理されている患者では48%だった。血管再建術施行率は、10日以内 がPCI 46%、CABG 5%で、10日以降はPCI 5%、CABG 7%だった。薬物療法のみで管理されている患者では、10日以降にPCIが10%、CABGが12%施行されていた。


◎侵襲的治療の有無によらず本解析と一貫した結果示す


主要有効性エンドポイントの発生率は、チカグレロル群でクロピドグレル群を17%(ハザード比(HR):0.83、95%CI:0.74-0.93、 p=0.0013、絶対リスク低下2.3%)、全死亡は24%(HR:0.76、95%CI:0.64-0.90, p=0.0020、絶対リスク低下1.5%)、ともに有意に抑制された。


主要安全性エンドポイントの大出血は、両群で有意差がみられなかった(HR:1.07、95%CI:0.95-1.19、p=0.2590)。一方で、 CABGに関連しない大出血はチカグレロル群で有意に増加した(HR:1.28, 95%CI:1.05-1.56、p=0.0139)。


10日以内の侵襲的治療の有無別の解析でも、主要心血管イベント発生は、薬物療法のみで管理(HR:0.85、95%CI:0.72-1.01)、侵襲的 治療施行(HR:0.86、95%CI:0.68-1.09)によらず、チカグレロル群でクロピドグレル群に比べ、抑制されていた。全死亡も薬物療法のみ で管理(HR:0.73、95%CI 0.57-0.93)、 侵襲的治療(HR:0.75、95%CI:0.53-1.07)で同様の傾向を示した。

安全性も大出血は、薬物療法のみで管理(HR:1.05、95%CI 0.88-1.26)、侵襲的治療(HR :1.10、95%CI 0.84-1.43)で有意差はみられなかった。一方で、CABGに関連しない大出血は、薬物療法のみで管理(HR 1.07、95%CI 0.74-1.56)、
侵襲的治療(HR:1.32、95%CI 0.92-1.90)で、チカグレロル群で多い傾向がみられた。


結果を報告したLindholm氏は、無作為化後に同定されたサブグループを対象とする後ろ向き解析であるため、「結果は探索的で仮説を生成するものにす ぎない」と解析の限界を指摘。その上で、「チカグレロルがクロピドグレルと比べ、ACS患者の心血管イベントおよび全死亡を抑制するというPLATO本試 験の結果と一貫する成績」と説明。さらに、「早期侵襲的治療の有無によらず、ベネフィットが得られることも示された」とした。


◎臨床試験結果の解釈で第三者によるMI判定の重要性示唆 


同セッションでは、試験中に発生した心筋梗塞(MI)についての検討も報告された。その結果から、臨床事象判定委員会(CEC)と施設の研究者報告との間にかい離がみられることも明らかになり、今後臨床試験でのMIの評価について一石を投じる結果となった。


手技によらない心筋梗塞は、CECの60%に対し、研究者は85%、PCIに関連するMIはCECの18%に対し、研究者は10%、CABGに関連する MIはCECの7%に対し、CABGは3%、ステント血栓症に関連するMIは、CECの15%に対し、研究者は2%などかい離がみられた。


報告されたMIのうち、研究者報告にはなかったが、CECが裁定したイベント数が438イベント(チカグレロル群:215例、クロピドグレル群:223 例)に対し、研究者がMIと報告したものの、CECがMIでないと裁定したイベント数が336イベント(チカグレロル群:184イベント、クロピドグレル 群:152例)だった。


結果を報告した、Duke Clinical Research InstituteのKenneth W Mahaffey氏は、発表の冒頭で「グローバルで44カ国において実施された同試験では、MIの定義が系統的に同一だとは言えない可能性に留意すること が重要だ」と指摘。さらに、試験の主目的がMIの評価を行う目的で実施されていない、CEC裁定と研究者報告を直接比較することはできないなど、解析に限 界があるとした。その上で、CEC裁定と研究者報告との間で、報告されたサブタイプが異なることなど、不一致があったことの重要性を強調。薬剤によって は、特定のサブタイプに高い効果を示す可能性もあると説明。「ACSの試験結果を解釈する上で、系統的で標準化されたイベントの評価システムが必須だ」と CECの意義を強調した。

 

【ACC.13取材】望月英梨 取材協力:医学ライター・リポーター 中西美荷 

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