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【ACCリポート】STREAM ST上昇型心筋梗塞患者への早期の線溶療法の有用性示す

公開日時 2013/03/27 06:00

発症1時間以内に緊急経皮的冠動脈インターベンション(primary PCI)を実施できなかったST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対し、t-PAのテネクテプラーゼ を用いた早期線溶療法と、必要に応じた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行により、Primary PCIと同等の心血管イベント抑制効果が得られることが分かった。臨床第3相試験「STREAM(Strategic Reperfusion Early After Myocardial Infarction)」から示された。すでにGLでも迅速な線溶療法が推奨されているが、同試験の結果から再確認されたと言えそうだ。3月9~11日の日程で開催された第62回米国心臓学会議(ACC.13)のLate Breaking Clinical Trialsセッションで10日、University of LeuvenのFrans Van de Werf氏が報告した。


Primary PCIは、専門施設に迅速に搬送されたSTEMI患者に対する再還流療法の有用な選択肢の1つとされている。しかし、大規模登録研究(レジストリー)の結果からは、最初の搬送先が緊急医療システムあるいはカテーテル対応不能な地域病院の場合、Primary PCIを実施するための施設間搬送の間に、ガイドライン(GL)で推奨される治療可能時間に遅れをとることが指摘されている。さらに、遅れた時間に比例して、イベントの発生率や死亡率が増加することも指摘されている。そのため、GLでも早期の線溶療法が推奨されている。


対象は、発症から3時間以内で、最初の医療機関の受診から 1時間以内にprimary PCIを実施できず、12誘導心電図で2点以上の隣接誘導もしくは前胸誘導で2mm以上のST上昇を認めたSTEMI患者1892例。早期線溶療法に加え、必要に応じて侵襲的治療を行い、標準的なprimary PCI と、心血管イベント抑制効果を比較した。主要評価項目は30日以内の全死亡+ショック+うっ血性心不全+再梗塞。


線溶療法群、プライマリPCI群の2群(線溶療法群:939例、primary PCI群:943例)に無作為に割り付けた。登録期間は、2008年3月19日~12年7月26日までに15カ国99施設から1892例を登録した。最初の搬送先は緊急医療システムが81%、PCI非対応地域病院が19%だった。


線溶療法群は、施設到着時にテネクテプラーゼ+アスピリン+クロピドグレル(初回投与量300mg+75mg1日1回)+エノキサパリン(30mg静注+1mg/kg皮下注12時間毎)を投与。90分後の心電図(ECG)で ST上昇が50%以上回復した症例には6~24時間以内に血管造影を行い、必要に応じてPCI/冠動脈バイパス術(CABG)、非回復例は直後に血管造影を実施し、必要に応じて救済治療として、レスキューPCIを実施した。Primary PCI群は、施設ごとに定められている標準療法に準じた 抗血小板および抗トロンビン療法を施行し、その後PCIを実施した。


なお、試験開始後、高齢者ではテネクテプラーゼ投与による頭蓋内出血の発生率の高さが指摘され、予定登録症例数(各群1000例)の20%に達した後、75歳以上患者に対してはテネクテプラーゼの投与量を半量に減量するよう、プロトコールが変更された。データ固定 は、2012年9月7日。


登録時の患者背景は、高齢者(75歳以上)が14%、女性が約20%、KillipクラスIが94%、梗塞部位が前壁は48%、下壁が50%以上だった。糖尿病の合併率は、線溶療法群で12%、primary PCI群で13%だった。違いがみられたのは、うっ血性心不全の既往率で、 primary PCI群で有意に多かった(1%未満対2%)。発症から治療開始までの時間(中央値)は、線溶療法群100分に対し、primary PCI 群では178分だった。施設到着と無作為化までに要した時間は、線溶療法群62+29分、primary PCI群61+31分で大きな差はみられなかった。しかし、最初の治療開始までの時間は、線溶療法群でテネクテプラーゼ投与開始までに9分要したのに対し、primary PCI群は86分と大きな差がみられた。

線溶療法群のうち、テネクテプラーゼ投与後2.2時間以内にレスキューPCIの施行は36%、17時間以内にカテーテル治療を施行が64%だった。

PCI施行前のTIMIグレードは線溶療法群で3が過半数など良好例が多数を占めたのに対し、primary PCI群では、0が過半数を占めた。PCI実施率は、線溶療法群(944例)で80%と、primary PCI 群(948例)の90%に比べ、有意に低率だったが、PCI実施例でのステント留置率はともに96%だった。CABG施行例は線溶療法群4.7%、 primary PCI群は2.1%で、有意に線溶療法群で高い結果となった(p=0.002)。


◎Werf氏「約2/3の患者で緊急カテーテル治療を回避できる」


主要評価項目の心血管イベント発生率は線溶療法群12.4%(116例/939例)、primary PCI群の14.3%(135例/943例)で、相対リスクは0.86(95%CI:0.68-1.09)と約2%有意に低下した(p=0.24)。


内訳は、全死亡(以下、線溶療法群対primary PCI群)4.6%対4.4%(p=0.88)、心血管死3.3%対3.4%(p=0.92)、うっ血性心不全(CHF)6.1%対7.6%(p=0.18)、心原性ショック4.4%対5.9%(p=0.13)、再梗塞2.5%対2.2%(p=0.74)といずれも有意差はみられなかった。事前に規定したサブグループごとのイベント発生率は、一貫して線溶療法群で低い傾向が見られたが、有意差はみられなかった。


脳卒中発生率は、プロトコール変更前は、全脳卒中(1.60%対0.53%、p=0.03)、出血性脳卒中(0.96%対0.21%、p=0.04)ともに線溶療法群で有意に高率だった。 高齢者への投与量を半量に減量した後は、全脳卒中(1.2%対0.66%、p=0.30)、出血性脳卒中(0.54%対0.26%、p=0.45)ともに有意差は認められなかった。


入院中の出血性合併症は、大出血(頭蓋内出血以外、6.5%対4.8%、p=0.11)、小出血(頭蓋内出血以外、21.8%対20.2%、p=0.40)、輸血(2.9%対2.3%、p=0.47)で、いずれも有意差は認められなかった。


結果を報告したVan de Werf氏は、発症1時間以内にprimary PCIを実施できなかった、発症3時間以内のSTEMI患者に対する迅速な線溶療法について、頭蓋内出血がやや増加することを認めた上で、「心血管イベント抑制効果は、primary PCIと同等で、約2/3の患者で緊急カテーテル治療を回避できる」と結論づけた。


登壇したパネリストらは、「すでにガイドラインで推奨されているものの、早期線溶療法の有用性を示した重要な一歩だ」と試験を評価した。一方で、高齢者では頭蓋内出血が多い傾向があることなど、安全性の観点から、「高齢者や体重60kg以下の患者では、異なる治療戦略を考慮すべきかもしれない」とも指摘された。

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